2021 Fiscal Year Research-status Report
「戦争花嫁」移民およびその子供と孫世代に関するオーラルヒストリー研究
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19K12535
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
土屋 智子 日本女子大学, 文学部, 准教授 (50611000)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 戦争花嫁 / 日米女性史 / 海外移住 / 国際結婚 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハワイへ渡り「戦争花嫁」移民の子孫の方々が母や祖母にあたる「戦争花嫁」たちの結婚、移住、祖国である日本をどのように理解しているのかについて記録を残す予定であったが、コロナ禍、ハワイへの渡航が困難になってしまった。この点については、ハワイへの渡航が可能になり次第、研究を進める予定にしている。2021年度は戦争花嫁移民の娘たちがディレクターを務めて制作した「七転び八起き:アメリカへ渡った戦争花嫁物語」(”Fall Seven Times Get Up Eight: The Japanese War Brides”)のドキュメンタリーに焦点を当てた。このドキュメンタリーは、2015年にルーシー・クラフト、キャサリン・トールバート、ケレン・カズマウスキーの3人の監督によって制作された。彼女たちは3人とも日本人「戦争花嫁」移民を母親に持つ。もう一つ、2019年8月17日に放映されたNHK BSドキュメンタリー「戦争花嫁たちのアメリカ」にも着目することとした。「戦争花嫁」移民に焦点を当てたドキュメンタリーは貴重で、近年はほとんど取り上げられることがない中、藤田英世プロデューサー、小柳ちひろディレクター率いる制作班によってNHKとテムジン社の共同で制作された。ドキュメンタリーは1時間40分で、主にカリフォルニア州に在住している日本人「戦争花嫁」による結婚、移住、アメリカ生活に関する語りを放映している。これら2本のドキュメンタリーから、日本人「戦争花嫁」移民本人だけではなく、子供や孫の視点にも焦点をあて、日本人「戦争花嫁」移民の結婚、移住、アメリカ生活が次世代にどのように解釈されているのかについて検証をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
戦争花嫁移民および子孫の方々にインタビューを実施する予定であったが、コロナ禍で渡航が不可能になってしまったため実施が見送られた。その点で、研究は当初の計画より遅れていると言わざるを得ない。しかし、ドキュメンタリーを使用して、分析の対象としていた、「戦争花嫁」移民の女性および子孫の方々の戦後のアメリカ生活について検証することができた点では前進した側面もあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はハワイへ渡航して「戦争花嫁」移民および子孫の方々へインタビューを実施する予定である。「戦争花嫁」移民に関する先行研究では、第二次世界大戦直後に生じた結婚に因ることから、日本にとっても、アメリカにとっても、国家の中で前向きな主体としてとらえられない傾向にあった。しかし、時が経ち、「戦争花嫁」移民の形成した家族に焦点を当ててみると、日系という人種カテゴリーにも白人または黒人という単一の人種カテゴリーにも当てはまらない「戦争花嫁」の子供たちは戦後のアメリカ社会においてミックス・レイスの先駆けとして生き抜いてきた側面を明らかにすることができた。今回はドキュメンタリーに焦点を当てているため、ドキュメンタリーから読み取れることの一考察に限られたが、今後さらに「戦争花嫁」移民が戦後アメリカ社会でどのようにミックス・レイスの子供たちの子育てを行ったのか考察を深めていきたい。そして子供たちや孫世代にインタビュー調査を行い、戦後の「アメリカ社会」における単一的な人種のカテゴリーにチャレンジする側面や、日系とのミックス・レイスであることをより肯定的に認知させるような動きや運動などにも着目してみたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍、2021年度は計画していたハワイへの渡航が実現せず、渡航費や宿泊費に充てる予定の予算を使用することができなかった。2022年度は、完全にコロナによる不安がなくなり渡航制限が解除されたとは言えないが、感染防止に配慮しながら可能な範囲で研究を進めたいと考える。予算は当初の計画通り、渡航費および宿泊費と、研究に必要な物品、図書、印刷などの諸経費に充てる予定である。万が一、海外への渡航不安により、今年度も渡航がかなわない場合には、国内にて女性や移民に関する資料館や博物館への訪問や既存のドキュメンタリーの使用によって研究を進めたい。
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