2022 Fiscal Year Research-status Report
「戦争花嫁」移民およびその子供と孫世代に関するオーラルヒストリー研究
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19K12535
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
土屋 智子 日本女子大学, 文学部, 准教授 (50611000)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 戦争花嫁 / 国際結婚 / 日米女性史 / 海外移住 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハワイへ渡った「戦争花嫁」移民のインタビューデータの文字起こしを行い、女性たちがハワイへ渡ったことに関してどのように語るのか、戦後という特殊な背景をどのようにとらえているのかについて再考を行っている。また、結婚や移住の特殊性から、ハワイにわたってからの現地のコミュニティとのかかわり、仕事や子育てを通してのハワイ主流社会とのかかわり、そして日系社会とのかかわりにどのような影響があったのかという点についても再考している。例えば、日本人にとって敗戦後の結婚という国家の権力関係は、その後渡米した先での夫婦関係にも影響を及ぼすのだろうか、もしそこに変化が生じるのであればそれはハワイという多文化、多人種社会の寛容性によるものであろうか、または「戦争花嫁」移民の主体的な意思によるものが強いのであろうか。特に、アメリカ人男性と日本人女性の国際結婚が珍しくなくなった時代に、6,70年前にアメリカへ渡った「戦争花嫁」移民の女性たちはどのようにハワイ社会の一員となり、日本にどのような想いを持ち、戦後を生き抜いたのであろうか。「戦争花嫁」の一人、スタウト和子氏は「戦争花嫁」移民たちは現代の国際結婚の先駆けとして草の根の活動を行ったと話している。この一年は現代のアメリカ人男性と日本人女性で形成された家族やその子供たちが多く通う日本人補習校のレインボー学園を観察する貴重な機会を得た。「戦争花嫁」移民の女性たちが戦後のハワイ社会で築いたことは現代までどのようにつながっているのだろうか。歴史の継続性に着目して、これらの問いの答えを明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦争花嫁の女性たちが、戦後の国際結婚の先駆けとして生き抜いたことを主張していたことに基づいて、ハワイにおいて国際結婚をした夫婦や家族について考察を行った。今日においても、ジェンダー割合としてアメリカ人男性と日本人女性がほとんどを占めている。一体、現在の国際結婚をしている日本人女性と、「戦争花嫁」と呼ばれた日本人女性の体験は何が違うのだろうか。「戦争花嫁」においては占領下における出会いと結婚であったこと、ハワイに渡ってからは敗戦国の女性を意味したことなど、歴史的なコンテクストに留意して分析する必要がある。現在とおよそ70年前という歴史的背景の違いに留意して「戦争花嫁」移民について再考してみたい。現在のハワイにおいて国際結婚をした夫婦や家族についての参与観察、および「戦争花嫁」移民女性のインタビューデータの取得やその文字起こしは準備ができたので、論文執筆によりその歴史を後世に残せるよう努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のハワイにおいて国際結婚をした夫婦や家族についての参与観察、および「戦争花嫁」移民女性のインタビューデータの取得やその文字起こしは準備ができたので、論文執筆を進めたいと考えている。 併せて、現在、ハワイ社会で夫婦関係または家族関係を築いている国際結婚家族についてさらに研究を進めることにより、戦後直後の国際結婚の特徴をより浮き彫りにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
ハワイ現地の滞在費が計上したよりかからなかったためである。 ハワイ現地でのアメリカ人と日本人女性の国際結婚状況や「戦争花嫁」移民女性の参与観察などに使用する予定である。
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