2020 Fiscal Year Research-status Report
フィリピン南部の平和構築:新自治政府設立をめぐる課題の解明
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19K12536
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
石井 正子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (40353453)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フィリピン / ムスリム / 武力紛争 / 自治政府 / 平和構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウィルス感染症の影響により、2回予定していた海外調査ができなかった。また、2020年9月にスペインで開催予定であった国際学会Philippine Studies International Conferenceにエントリーし、採択されたが、2021年度に延期になってしまった。代わりに現地調査協力者に謝金を支払い、毎月、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ暫定自治政府の行政機能拡充の進展、同自治政府のコロナ対策、および治安状況についての情報提供を受けた。提供された治安情報を自治体別に分類し、どのような係争の特徴があるかについての把握に努めた。感染症の影響をうけて暫定自治政府が移行期間を延長するキャンペーンとロビイングを開始したため、その動向把握に努めた。研究計画として予定していたアチェ、カタルーニャ、北アイルランドとの比較研究については、あまり進展させることができなかった。代わりに、現地に渡航できない巣ごもりの状況を活用し、スペイン植民地期、アメリカ植民地期初期の植民者とムスリムとの対峙の歴史についての文献を購入し、精読した。スペイン植民地期の研究については、モルッカ諸島への進出を睨んだスペイン当局と南部の「モロ」との二者関係の対峙という枠組みではなく、中国や日本との交易関係を視野に入れて両者の関係を考察することの重要性が理解された。アメリカ植民地期の研究については、2020年度に新刊が複数刊行されたことより、最新の研究について知見を深めた。元兵士の社会復帰後の生計手段として、バナナ生産の多国籍企業が暫定自治地域で創業を行なっているが、問題も生じている。その動向を追うとともに、それらの諸問題を含めて編著書『甘いバナナの苦い現実』(コモンズ、2020年)を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響により、海外出張ができず、また国際学会も延期となった。国際学会では、ISの影響を受けたグループとフィリピン政府軍との武力紛争となったマラウィ市街戦について報告し、英文学術誌に投稿することを予定していたが、それを実行することができなかった。アチェ、カタルーニャ、北アイルランドとの比較研究についても、あまり進展させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響を受け、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ暫定自治政府の移行期間の延長を訴える動きが起こっている。2021年度はこの動きがどのような展開を見せるかについて注目して行く。フィリピンでの現地調査が実施できるようになれば渡航するが、実施できないようであれば引き続き現地調査協力者に謝金を支払い、情報収集を行い、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ暫定自治政府の行政機能拡充、同自治政府のコロナ対策、および治安状況などの現地情勢の把握に努める。 マラウィ市の復興開発過程についてもできる限りアップデートを行う。延期されていた国際学会が実施されるようであれば参加し、同市で展開された市街戦について報告をおこない、議論にもとづいて英文学術誌に投稿する。アメリカ植民地期におけるフィリピンのムスリム社会に関する最新の研究が出版されていることから、さらにこれらについて知見を深める。アチェ、カタルーニャ、北アイルランドとの比較研究について研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、海外調査を実施することができなかった。次年度後半には海外調査が実施できるようになることを期待するとともに、それが不可能であった場合、現地調査者に研究補助を依頼するなど次善策を立てる。
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