2023 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピン南部の平和構築:新自治政府設立をめぐる課題の解明
Project/Area Number |
19K12536
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
石井 正子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (40353453)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フィリピン / ムスリム / 和平プロセス / 武力紛争 / 自治政府 / 選挙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1)フィリピンの権力構造における新自治政府の展開はいかなるものか、2)モロイスラム解放戦線(MILF)は、いかに武装集団から政治集団へ変容を遂げるか、3)MILF以外の武装集団が存在するなか、新自治政府はいかに治安を維持するのか、の3つの問いを立てた。 このうち1)については、2022年の選挙時に政治王朝を築いてきた地方政治家とMILFとのあいだに連携があった一方、対立的な関係に発展した地方政治家もあったことが分かった。MILFの政治政党「統一バンサモロ正義党(United Bangsamoro Justice Party: UBJP)」から出馬した立候補者の大多数が連携した地方政治家であった。2)については、4年間でUBJPの幹部7名、および暫定自治政府の19町において選挙に関するインタビューを行った(このうち、3町でのインタビューは2023年度に行った)。その結果、連携の具体的なかたちが明らかになった。とりわけ、暫定自治政府の設立期間を2022年から2025年に延長する法案の議会での採否過程で、大統領府が仲介となりMILFと地方政治家のあいだで選挙に関する協約が結ばれたことが、連携の形に大きく作用したのだが、このことは余り報道されることはなく、現地調査でしか明らかにできなかったことと思われる。 3)については、2017年のマラウィ包囲戦でISに忠誠を誓う諸グループのリーダーが殺害されたあとは、同グループの勢力は弱体化している。しかし、2023年12月にミンダナオ国立大学マラウィ校の体育館が爆破され、同グループが関与したと報じられているように予断は許さない。MILFの兵士の武装解除は遅れており、武装解除に応じた兵士のあいだでも約束された支援パッケージが十分ではないとの不満も出ている。治安維持については、流動的な状況が続いている。
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