2021 Fiscal Year Research-status Report
インド人看護師の国際労働移動とインド国内の看護師需給の関係性に関する分析
Project/Area Number |
19K12542
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小田 尚也 立命館大学, 政策科学部, 教授 (30436662)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インド / 看護師 / 国際労働移動 / 看護師不足 |
Outline of Annual Research Achievements |
タミル・ナード州で収集したデータを使用し、インド人看護師の労働移動の目的について分析を行った。294人に看護師にインタビュー調査を実施し、このうち72名が看護師として海外労働移動の経験があった。労働移動の目的について回答のあった68人中、最も多い理由は、(1)高い所得とより良い生活のため、(2)専門技術の習得の2つであり、それぞれ15人の回答があった。これにつづいて、良い伴侶を見つけるため(14人)、子供の教育・将来のため(11人)であった。 出稼ぎの理由を、看護師の勤務する病院のタイプ別、宗教別に分類して出稼ぎ理由を検討すると、「専門技術の習得のため」に出稼ぎするという理由は、公立・民間病院のどちらの看護師にも多く見られる傾向であった。しかし公立病院の看護師は、「子供の教育・将来のため」、「良いパートナーを見つけるため」という二つの項目をより重視している。一方、民間病院の看護師の出稼ぎ労働の理由は、「高い所得とより良い生活」のためが最も重要な理由であった。この違いは民間病院の低い給与と公立病院の高い給与や手当を反映している。 宗教別で見た場合、ヒンドゥー教徒の看護師にとって、最も重要な出稼ぎ理由は、「よい結婚相手を見つけるため」であった。キリスト教徒は、「所得とよりよい生活のため」が最も多い理由であった。このように宗教別で見た場合、出稼ぎ理由に差異がある。 興味深いのは、多くのヒンドゥー教看護師が、海外出稼ぎによって結婚市場での彼ら、彼女から価値を上げ、よりよい相手を見つけようとしている点である。カーストにより社会階級のモビリティーが制限されているヒンドゥー教徒にとっては、看護師になり経済的、社会的ステータスを上げることで、モビリティーを向上させたいという思いが強いのではないかと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19パンデミックにより、現地調査ができずデータ収集が難しい状況にあったため。
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Strategy for Future Research Activity |
現地カウンターパートを現地調査の準備を進めている。インドは外国からの送金規制があるため、調査員に対する支払いについて可能な方法を検討中である。今後のCovid-19の現地の状況にもよるが2022年の夏には現地に赴き、データ収集を実施し、分析を進めることを計画している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によりインドへ渡航することができず現地調査が行えなかったため。また現地インドのコロナ感染状況悪化により現地カウンターパートへの委託調査も困難であったため。 次年度は新型コロナの状況が落ち着き、インドの入国制限が解除され、また日本の出入国の緩和が見られることから、現地調査の実施を予定している。もし現地調査が実施困難な場合は現地カウンターパートにデータ収集を依頼し、研究を進めていく計画である。
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Research Products
(2 results)