2019 Fiscal Year Research-status Report
現代インドの「不可触民」にみる聖人信仰と社会運動の展開
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19K12543
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
舟橋 健太 龍谷大学, 社会学部, 講師 (90510488)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 「不可触民」 / インド / 聖人 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは、「不可触民」たちが社会運動に導かれる主たる誘因として、またかれらの凝集の軸として、「聖人信仰」を捉え、調査研究を推進していくものである。すなわち、聖人信仰の実践の様相に焦点を当てた現地調査から、被差別民における「アイデンティティの複数性と共有」から拡がる他者関係の展開可能性を、いかに捉え、考えることができるか、分析・考察を行っていくものとなる。 2019年度においては、6月に、本研究課題とも関わる論考として、「よりよい生を求めて―インド、「不可触民」の解放実践と仏教改宗」(石森大知・丹羽典生(編)『宗教と開発の人類学―グローバル化するポスト世俗主義と開発言説』、春風社、2019年6月)が刊行された。また7月には、オランダのライデンで開催された国際会議(11th International Convention of Asia Scholars)においてパネル(“Social Inclusion/exclusion in South Asia 2: Minorities”)を組み、発表を行った。発表タイトルは、“Expanding Identities and Social Inclusion: A Case Study of Dalit Converts to Buddhism in North India”であり、改宗仏教徒にみられるアイデンティティの共有状況について報告を行ったものである。 12月には、パンジャーブ州チャンディーガルを訪れ、当地で開催された国際会議に参加し、コメンテーターを務めるとともに、当地の社会状況についての調査を行い、また現地研究機関の研究者たちと見解の交換を行った。 いずれも、本研究プロジェクトの進展に大きく資する重要な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、夏期(7月中旬)に国際会議で本研究課題に関わる発表を行い、質疑応答から、数々の論点の提示や示唆を受けて、考察の深化に努めることが可能となったものである。また、春期(3月下旬)に予定していた現地調査については、新型コロナウィルスの影響から断念せざるを得なかったが、冬期(12月下旬)にパンジャーブ州チャンディーガルに赴き、国際会議に参加するとともに、現地社会状況の把握や現地研究者との討議を行い得たものである。 以上から、研究の進捗としては、概ね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題であるが、研究推進の主軸として現地調査を置いていることから、新型コロナウィルスを理由とする現地調査実施の可否が、今後の研究展開に大きく影響してくるものとなる。内外の情勢から、インド出張が可能となった場合には、夏期(8月)、冬期(12月~1月)、春期(2月~3月)のいずれかにおいて、1回~2回の現地調査を行うものである。 一方、2020年度において、先の理由から現地調査を行い得ない場合には、ひとつには、文献渉猟による論点の整理に努め、これまでの調査データの分析・考察に努めるものである。またもうひとつには、オンラインでの国際会議への参加や海外研究者との討議を試みることにより、見解の交換・考察の深化を図り、研究課題追究の一助とすべく考えている。 合わせて、今般の新型コロナウィルスが及ぼす社会への影響について、特に社会経済的により大きな不利益を被りやすい「不可触民」たちに焦点を当てて、情報の収集・分析と、考察の展開を行うものである。
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定していた現地調査のための海外(インド)出張が、新型コロナウィルスの影響から実施不可となったため、次年度使用額が生じたものである。当該繰り越し経費については、海外渡航が可能となった折に、予定通り、現地調査のための旅費として使用すべく計画しているものとなる。
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Research Products
(2 results)