2020 Fiscal Year Research-status Report
現代インドの「不可触民」にみる聖人信仰と社会運動の展開
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19K12543
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
舟橋 健太 龍谷大学, 社会学部, 講師 (90510488)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 「不可触民」 / インド / 聖人 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは、「不可触民」たちが社会運動に導かれる主たる誘因として、またかれらの凝集の軸として、「聖人信仰」を捉え、調査研究を推進していくものである。すなわち、聖人信仰の実践の様相に焦点を当てた現地調査から、被差別民における「アイデンティティの複数性と共有」から拡がる他者関係の展開可能性を、いかに捉え、考えることができるか、分析・考察を行っていくものとなる。 2020年度においては、新型コロナウィルスの世界規模での感染拡大の影響を受けて、当初計画していたインド現地調査等について、すべて実施することができなかった。代替的に、これまでの研究蓄積の整理とまとめ、刊行・発信に努めた。すなわち具体的には、まず、初学者向けの概説書である『ようこそ南アジア世界へ』(昭和堂、2020年4月)の共編著での刊行が挙げられる。研究代表者は、そのうち、本研究課題の成果も盛り込みつつ、第8章「社会―多様な人びとが織りなす暮らし―」(pp. 155-179)の執筆を行った。また、2020年9月1日には、オンラインで開催された国際学会であるAAS-in-Asia 2020において、パネル"Trans-cultural Mobility and the Changing Notion of 'Universality'"のコメンテーターを務め、「普遍性」をどのように考えることができるか、議論を展開した。さらに2021年3月には、これまでの研究蓄積を基に、不可触民をめぐるさまざまなかたちの暴力と、それへの不可触民たちの応答について考察した論考である「「まなざし」を超えて――「不可触民」をめぐる暴力の位相」(田中雅一他(編)『インド・剥き出しの世界』、春風社、pp.172-195)が刊行された。 以上、海外出張や現地調査が行えない状況のもと、可能なかたちでの研究の進展を図ったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、世界規模での新型コロナウィルス感染拡大の影響から、海外現地調査を一切行うことができず、当初の研究計画を十全に推進することができなかった。これまでの研究蓄積を基にした論考の執筆・刊行に努めているが、やはり現地調査を実施できない影響の大きさは否めず、研究課題の進捗については「やや遅れている」ものと判じざるを得ないところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題であるが、研究推進の主軸として現地調査を置いていることから、やはり新型コロナウィルスを理由とする現地調査実施の可否が、今後の研究展開に大きく影響してくるものとなる。内外の情勢から、インド出張が可能となった場合には、夏期(8月)、冬期(12月~1月)、春期(2月~3月)のいずれかにおいて、2回程度の現地調査を行うものである。 一方、2021年度において、先の理由から現地調査を行い得ない場合には、ひとつには、引き続き、文献渉猟と研究の蓄積に基づく論点の整理に専心し、これまでの調査データの分析・考察、ならびに成果の刊行に努めるものである。またもうひとつには、オンラインでの国際会議への参加や海外研究者との討議を試みることにより、見解の交換・考察の深化を図り、研究課題追究の一助とすべく考えている。 合わせて、今般の新型コロナウィルスが及ぼす社会への影響について、特に社会経済的により大きな不利益を被りやすい「不可触民」たちに焦点を当てて、情報の収集・分析と、考察の展開を行うものである。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた現地調査のための海外(インド等)出張が、新型コロナウィルス感染拡大の影響からすべて実施不可となったため、次年度使用額が生じたものである。当該繰り越し経費については、海外渡航が可能となった折に、予定通り、現地調査等のための旅費として使用すべく計画しているものとなる。
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Research Products
(4 results)