2019 Fiscal Year Research-status Report
「自然」が文化資源化されるマスツーリズム的状況の観光人類学的研究
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19K12551
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Research Institution | Komatsu University |
Principal Investigator |
杓谷 茂樹 公立小松大学, 国際文化交流学部, 教授 (90410654)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古代マヤ文明 / 遺跡公園 / 「自然」の語り / マスツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年8-9月及び令和2年2月にメキシコとアメリカ合衆国において、遺跡公園や博物館における古代文明の展示のあり方にどういった自然観が関与させられているかについての、観察、調査を実施した。 メキシコでは、まずはキンタナ・ロー州のカリブ海沿岸地域において、高度に観光化されたトゥルム、エル・レイ、サン・ミゲリートなど有料公開されている遺跡公園の観察と公園管理者へのインタビューを行っただけでなく、ホテルの敷地内で宿泊客に見せるためだけに囲い込まれ保存、展示されている小型遺跡(ヤミル・ルウム、ビジャス・タアクル、プンタ・カンクンなど)の確認を行うことができた。特にホテル敷地内に囲い込まれた小型遺跡からは、ホテル側が宿泊者に提供したいメキシカン・カリブの「自然の語り」と、古代の建造物にまつわる「語り」があまりかみ合っていないまま展示が行われている様子に興味深いものを感じた。また、これに関連してParque Eco-arqueologicoの考えが始まったとされるチアパス州のパレンケ遺跡公園や、メキシコシティの国立人類学歴史学博物館や同市近郊のテオティワカン遺跡公園なども訪問し、観察することができた。 アメリカ合衆国ではニューヨークのメトロポリタン美術館を訪れ、メソアメリカのみならずその他の文明についても、文明に関する情報提示で、現代社会における自然観がそれぞれどのように提示の中に投影されているかに注目して観覧した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公園に自然にかかる「語り」を取り入れたParque Arqueologicoという展示形態とその思想についての調査については、いくつかの大規模の遺跡公園の観察ができたものの、あまり名前が知られていない中規模の遺跡公園の調査は時間の関係で思うようにできなかった。それでも、当初あまり期待していなかったホテル敷地内の小型遺跡の確認ができたことは予想外の収穫だったと考える。 また、当初の計画で予定していた、カンクン・リヴィエラマヤ観光圏の自然に関連した観光アトラクションの調査については、スケジュールの関係で今年度は実施できなかったものの、米国のメトロポリタン美術館を訪問できたことから、とりあえず初年度の進捗としては概ね順調であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施できなかった調査については、2年目以降の実施計画に追加しておこないたいと考える。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大により、2年目の夏期には現地調査は実施できそうもないため、例えば、まずは旅行記や観光ガイドブック、そしてできればインターネット上の情報などの精査により、マスツーリズム的状況あるいはマスツーリズム的思考におけるヘリテージの語りに、「自然」の語りがどのように関与しているかを考察していきたい。これによって得られた知見をふまえ、春期以降の現地調査の予定を再考することも考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた観光アトラクションについての調査を実施しなかったことによる。2年目は現地調査が十分に実施できない可能性があるので、これに代わる文献調査にかかる、書籍や物品の購入に充てることとする。
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