2021 Fiscal Year Research-status Report
イタリアの農村ツーリズムにおける地域毎の推進状況の分析と有効な支援策の検証
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19K12564
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
佐藤 輝 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (30386924)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グリーン・ツーリズム / アグリツーリズモ / 品質認証制度 / 国際比較 / イタリア / ドイツ / フランス / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
農村の環境・景観保全を図り、農家にとって収入増につながる農村ツーリズムは、イタリアでは「アグリツーリズモ」(以下、AT と略す)と規定され、2000年以降、2018年までにAT農家軒数が倍増するほどの発展を遂げた。本研究では同国立統計研究所から入手したデータに基づき、新たな指標として県ごとの AT農家密度による各地の推進状況の分析と、現地でのインタビュー調査による多角的な AT産業の支援体制の把握とを組み合わせて研究を進めてきた。2021年度には、引き続いて、この AT産業の品質・サービス向上のために貢献している品質認証制度の評価要件について、同制度の先行諸国(ドイツ、フランス、イギリス)のこれらとを学術的に初めて国際比較した。長期化するコロナ禍によって現地渡航が叶わない中、多言語の資料をインターネット上から入手して、該当部分を抽出・読解した。 この結果、特にイタリアでは農村的要素の中でも、とりわけ地元食材や自家製品の充実度に重点を置いて評価要件が組み立てられていることを明らかにした。また、この制度のイタリアでの成立の経緯や新たな展開を日本語で初めて紹介しつつ、日本での同様の制度運用のポイントや全国各地での農家民宿の品質レベルアップに向けた方法を考察した。これらの成果を雑誌論文1件として発表できた。これに先立ち日本環境学会研究発表会でも、同じ標題の口頭発表を通じて途中経過を報告した。さらに、ここ3年間の成果を要約して書籍(共著書)の1章分として盛り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」とした理由は、新型コロナウイルス変異株の感染がイタリアでも相次いで拡大し、直行便の長期欠航や入国時の陰性検査証明・自主隔離(5日間)の徹底が断続的に続いており、現地を訪問してのインタビュー調査と資料収集ができなかったためである。(これに加えて、日本に帰国する際の陰性検査・自己隔離(6日~14日間)によって通常の業務に支障が出るため、渡航には慎重にならざるを得なかった。) このため、インターネットから得た資料のみに基づいて、確証をもって解明できた部分のみを論文として執筆することに専念した。一方の不明点や疑問については、メモとして書き出して、将来の渡航時に調査できるよう準備中である。 なお、品質認証制度と並行して重要なテーマとして本研究で設定している「農業団体等による食材の地産地消の AT農家・レストランへの支援活動」についてもインターネットの情報や先行研究を網羅的に収集して、渡航の際に焦点を絞った効率的なインタビュー調査を実施できるようにデータや仕組みをまとめている段階である。AT産業の徹底的な地産地消のネットワークを支えるノウハウは、日本の食材・農業を通じた地域活性化に対してもおおいに参考になるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に渡航できなかった北部のボルツァーノ県の諸団体とAT協会テッラノストラのヴェネト州支部、および3年目に渡航できなかった南部のラツィオ州とバジリカータ州、島嶼部のサルデーニャ州における諸団体を対象として、2022年8月下旬~9月上旬に一度で訪問できるかどうかを模索している。この可否については、事前の準備を勘案すると、5月頃には最終的に判断する必要があろう。もし、新型コロナウイルス感染の影響によって、渡伊の見通しがまだ立てられない場合には、現地調査を2023年3月に実施できれば幸いである。 また、2022年7月には日本環境学会研究発表会にて「イタリアのアグリツーリズモにおける食材の地産地消を支える組織的活動の先進事例調査」と題して、州毎の特産品のブランド化や流通ネットワークについて、ウェブ情報や文献で調査中の内容を報告する予定である。ここで把握した結果を現地調査項目としても追加して反映させて、新たな論文として取りまとめるよう尽力する。 長期的にめざしたいのは、農村ツーリズムの重層的な振興策についてイタリア以外のヨーロッパ諸国の概略も横断的に明らかにしつつ、日本や発展途上国の「環境保全と観光促進(経済発展)の両立」に資する制度・政策の体系化に寄与することである。
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、2021年度にも新型コロナウイルスのイタリア全土での蔓延と日本での帰国時の14日間の自己隔離措置等によって現地調査が遂行できず、本研究課題の予算科目である旅費と謝金(イタリア語の通訳料)を執行できなかった。 そこで、直接経費の合計70万円を効率的に使用する渡航計画を維持している。つまり、1回(約2週間)の渡伊によってボルツァーノ自治県、エミリア=ロマーニャ州、ヴェネト州、ラツィオ州、バジリカータ州、サルデーニャ州を最短の移動経路で回りながら合計11ヶ所へのインタビュー調査を行うつもりである。今後、感染予防措置が緩和される時期を見極め、早ければ2022年9月、あるいはアグリツーリズモの現場確認として冬では不十分ながらも2023年3月の渡航を検討する。 渡航時期に応じて、半構造化インタビューの内容について各州での通訳者に翻訳を依頼し、訪問日程の調整も開始する予定である。
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