2021 Fiscal Year Research-status Report
The Impact of Integrated Resort on Local Economy and Direction of Regulation
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19K12576
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳥畑 与一 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60217594)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統合型リゾート(IR) / カジノ / ギャンブル依存症 / ギャンブルの経済効果 / オンラインギャンブルの影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍の影響で予定していた海外調査は行うことが出来なかったが、国内で「区域整備計画」の作成を進めていた長崎県と和歌山県、大阪府の現地調査を行うと同時に、研究成果を下記のように公表した 1.公共政策学会2021年度研究大会自由公募セッション(21年6月5日)で「IR(統合型リゾート)の経済効果の検証―都市成長戦略としての横浜IRを事例として-」の報告。2.神奈川大学法学研究所主催「横浜市のIR推進を考えるシンポジウム」(21年6月26日)で「横浜市のIR推進の問題点」の基調講演」(*本シンポジウムの内容は公人の友社より『エビデンスに基づいた政策決定(EBPM)の可能性―横浜市のIR推進を考える』として公刊)。3.地域経済学会第32回大会(20年12月)の共通論題報告「IRカジノは地域経済活性化の切り札になるのか」の学会誌『地域経済研究』第41号(21年6月)での掲載発表。4.日本弁護士連合会主催シンポジウム(21年10月8日)での基調講演「いま、日本にカジノは必要か~コロナ禍後の日本社会の持続的発展を見据えて~」。5.『消費者法ニュース』127号(21年4月)で「ギャンブルのオンライン化の進行について」、『月刊民商』(21年11月号)で「ばくちではなく、育て合いの経済を-アフターコロナを見据えて」等の原稿掲載。上記の他、和歌山県、長崎県、横浜市、大阪市で市民団体主催のシンポジウム等で講演を行ったほか、マスコミ等を通じて多数の見解の公表を行うことで研究成果の社会還元を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた海外調査は、初年度の米国マサチューセッツ州の現地調査を行うことができたが、その後はコロナ禍の影響で予定していたオーストラリア調査や中国マカオ調査等を行うことが出来ていない。 マサチューセッツ州調査では、経済的に貧しい地域の振興策としてのカジノ設置であり、その政策効果を担保するための地域住民との協定等を通じた合意形成の手続きや依存症対策などの手厚い対策が導入されていることを確認できた。また国内調査については和歌山県や長崎県、横浜市などのIRによる地域振興を進めている自治体地域への現地調査を行うことでその計画の問題点について検証を進めて来た。 現在、コロナ過によって国際観光業のあり方が大きく変わり、またオンラインギャンブルの急速な拡大や中国政府のギャンブル依存症やマネーロンダリング対策強化でアジアと世界のカジノ市場の構造転換が進む中で、統合型リゾートというカジノ収益を基盤に巨大な集客施設を建設することで経済効果を最大限化する政策の前提を大きく揺らいでいる。その中で、カジノ収益に依存しない国際会議展示施設や娯楽施設を中心にしたIRの可能性が必要になってきている。この点で、カジノ依存からの脱却を進める米国ラスベガス市場の分析や、新たな法規制の制定を通じてカジノへの過度の依存を是正しようとするマカオ市場の動向分析が重要になっており、アフターコロナ後のIRのあり方について調査研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ過がなかなか収束しない中で、計画の一年延長を認めて頂いた。残り一年で、新型コロナの発生などの新たな感染病の可能性があるなか、また経済のデジタル化、オンラインギャンブルが急速に進行する中での地域振興策としてのIRのあり方について研究を深めたい。その上で新たな観光のあり方を模索している中国マカオ市場に注視して、本年8月に施行が予定されている新たなギャンブル規制法の下でのマカオのカジノ市場の分析、そして観光産業の動向について現地調査を追求したい。また同様に深刻なカジノ禍に見舞われたシンガポールの観光産業の動向についても分析を行いたい。 世界とアジアのカジノ産業の大きな構造転換が進む中で、日本の国際観光業の進行やMICE産業の活性化そして地域経済の成長のためにはどのようなIRが必要なのかについて研究成果をまとめたいと考えている。そのためにも本年4月に提出された大阪府市と長崎県の「区域整備計画」の内容と国の審査について調査研究を進めることで、どのような「区域整備計画」が必要なのかについての検証も行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で予定していた海外調査が行えなかったため。 本年度は、現在新たなギャンブル規制法が施行され、富裕層ギャンブラー依存からの脱却を進めるマカオのカジノ市場と観光の動向についての調査を行いたい。日本のIR政策の前提はマカオ市場におけるカジノの高収益性であったが、今後マカオのカジノ市場がどう再編されるのか、またオンラインカジノなどの影響はどうなのか、ギャンブル依存症対策は有効に機能しているのか等について調査を行う予定である。
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