2023 Fiscal Year Research-status Report
地方都市におけるプレイスメイキングと交流型観光の連係手法に関する研究
Project/Area Number |
19K12578
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
永瀬 節治 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (10593452)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 公共空間 / 水辺 / 社会実験 / 歴史的資源 / 公民連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の一環として、和歌山市駅から徒歩圏内に位置する紀の川河川敷の芝生広場(紀の川第5緑地の一部)をプレイスメイキングの拠点として活用する社会実験(2018年より毎年実施)における実証調査について、2023年度は10月28日および29日に実施し、引き続き来場者アンケート調査等により滞在内容やニーズ、満足度等を把握した。前年度より新たに開始したキャンプ(宿泊体験)を拡大実施するとともに、国による紀の川直轄改修100周年事業との連携を図ることで、災害時に活躍する特殊車両の展示・乗車体験や、紀の川の歴史や付近の近代橋梁に関心を向けてもらうため、川への視点場に展示パネルを設置した休憩スペース(眺望テラス)を設けるなど、歴史的資源としての紀の川の価値に触れてもらう機会として企画した。日中来場者の満足度は高水準が維持されるとともに、市外からの来場者の割合が例年より増加し、電車による来場者も増加するなど、駅に近接した河川敷の立地条件が活かされる成果も得られた。また規模を拡大したキャンプについても、大半の参加者の満足度も高く、今年度から徴収した保存協力金の額についても妥当という評価が得られるなど、継続的な実施を後押しする成果が得られたが、ハード面での課題も指摘され、これらの利用形態を想定した河川空間整備の重要性も示唆された。 都市空間資産の活用の視点からは、近江八幡市における歴史的な水辺空間を活かした交流型観光の実態把握のため、前年度にも実施した「水郷めぐり」等の舟運事業者を対象としたアンケート調査の追加調査を実施し、舟運事業の動向や、事業者と関係主体との連携の現状、地域資源に対する価値認識について把握した。 以上の成果については2024年度の日本建築学会大会学術講演会において発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、コロナ禍以前と同水準の集客型イベント等の実施が可能になったことで、紀の川河川敷での社会実験については前述のように内容を拡充して実証することが可能になった。一方で、コロナ禍以前に和歌山市内において体験型交流プログラムとして実施していた「市駅まちぐるみミュージアム」については、休止期間が長期に亘ったことや、その後の地域の関係者の状況の変化等により、従前のような運営体制、プログラム構成により実施することが難しい状況にあり、個別の体験交流型コンテンツと都市空間資産・公共空間の組み合わせによる実施検証を検討している。そのため当初の研究計画に基づく進捗状況としては遅れていると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
和歌山市内での実証調査については、前述のとおり紀の川河川敷等の屋外の公共空間を活用する社会実験を対象に、引き続き効果の検証に取り組む。また2024年度から和歌山市駅前の街路空間(市道和歌山市駅前線)の歩道空間を活用したパークレット型の歩行者滞在空間(ストリートガーデン)を設置する社会実験に着手しており、同空間を活用した交流型コンテンツの提供によるデータ収集も試みる予定である。 あわせて、引き続き近江八幡市をはじめ、国内の歴史文化を活かしたまちづくり取り組む都市を対象に、都市空間資産を活用した交流型観光の実態把握や、地域資源を活用したマイクロツーリズム等のプログラムを公共空間の活用と連係させる手法や実例の広がりについて情報収集を続け、ポストコロナ期における市民と観光客の交流の場としての公共空間のあり方について総括を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度も、和歌山市以外での調査が限定的なものになったため、調査協力者への謝金や関連経費等の予算に繰越が生じた。また対象事例の現地調査についても見直しを行ったため、旅費の支出が削減された。これまでの対象事例の見直しや調査全体の軌道修正を踏まえた知見の体系化を見据えながら、最終年度において収集可能なデータや追加調査について検討し、適切な予算執行を行う。
|