2021 Fiscal Year Research-status Report
デスティネーション・マーケティングにおけるPPMの有為性の検証ー沖縄県を事例にー
Project/Area Number |
19K12581
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
金城 盛彦 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (30317763)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 沖縄観光 / 国内客 / リピート率 / PPM |
Outline of Annual Research Achievements |
一昨年は、国内観光客の中からリピート客を特定するための質問の設定が障害になりました。特に、複数選択の訪問先の全てについて、前回の訪問時期等を訊ねることは、被験者に多大な負担を強いるものでした。そこで、分析結果の比較対象である先行研究(レポート)を再度確認した結果、修学旅行や出張等を除き18歳以降に、当該都道府県を訪問した時期や場所の特定は、追加調査の対象であることが判明しました。それならば、当該都道府県を訪れた回数を基に、リピート回数が容易に把握できます。 そこで、昨年度はまず、全国調査でもあり実査が困難なため、計画でも予定していたWebモニター調査を利用し、18歳以降、修学旅行や出張等を除き一度も国内旅行の体験が無いモニターを除くためのスクリーニングを行い、その結果、本調査の対象足り得る5000人のモニターを、人口構成を基づき確保できました。 この集団に対し、年度末には18歳以降に修学旅行や出張等を除く国内旅行体験を訪ねました。本研究は沖縄県への訪問歴が主な調査課題ではあるものの、有りそうで存在しない、国内リピート客市場に占める、他地域のシェアの把握も副次的目的としているため、11の同県、地方についても調査を行い、1500人のモニターから回答を得ました(今後の調査の設問数と回答負担を考慮し、先行研究のような都道府県別ではなく、北海道と沖縄県以外は地方別に調査を行いました)。 現在は、回収データのクリーニングと、国内リピート客市場に占める、11の同県、地方のシェアの試算を行い、上述の比較対象である先行研究の結果との比較を進めているところです。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年までは、国内観光客の中からリピート客を特定するための質問の設定が障害になりました。特に、複数選択の訪問先の全てについて、前回の訪問時期等を訊ねることは、被験者に多大な負担を強いるものであり、調査、研究の進捗状況は遅れていました。しかし昨年は、調査結果の比較対象の先行研究(レポート)を踏まえ、修学旅行や出張等を除く18歳以降に、当該都道府県を訪れた回数に基づき、同都道府県へのリピート回数を訪ねる、極めて簡略化した調査で、所期の目的を充足できることが判明し、Webモニターを対象に、スクリーニングで5000人のモニターを、人口構成比に順じた形で確保し、年度末には、その5000人を対象に本調査を実施、1500人から回答を得ました。 したがって、本調査の主目的である、国内リピート客市場に占める、地域のシェアを試算はすでに実行可能です。すなわち、「市場の成長性」と「(相対的)市場占有率(シェア)」を軸に四分割し,成熟し成長性は低いものの,高いシェアを有する(金のなる木)事業で得たキャッシュ(資金)で,成長性,シェアとも高い(花形)事業を支え,同様に成長性が高く,シェアを上げれば花形に成り得る(有望な問題児)事業を育成するようにそのポートフォリオを構成する、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)のデスティネーション(観光目的地)・マーケティングへの適用といった、調査、研究のコア中のコアを確実に実現し得る目途が立ちました。また、回収データの完全なクリーニング(使用可能データの抽出)前ではあるものの、試算した11の同県、地方の国内リピート客市場に占めるシェアは、概ね、先行研究と同じ結果を示したことも、現在までの進捗状況をおおむね順調と判断した大きな理由です。
|
Strategy for Future Research Activity |
回収した1500人のモニターの回答に対し、欠損データの除去等、クリーニングを行った上で、国内リピート客市場に占める、11の同県、地方のシェアを確定します。その上で、スクリーニングで確保した5000モニターから1500人を除いた上で、同じ調査を実施、2000~3000人のモニターの回答を得た上で、同じく、11の同県、地方の国内リピート客市場に占めるシェアを求めます。そして、得られた2組の11の同県、地方の国内リピート客市場に占めるシェアの組に対し、「2群の比率の差の検定」を施すことで、得られたシェあが統計学的にも優位と言えるか検証します。 その上で、11に同県、地方の国内客の増減を基に「市場の成長性(客数の増減率)」を求め、調査、研究のコア中のコアであるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)を描きます。その上で、調査、研究の中心的な考察課題である、コロナ禍以前に沖縄県が、観光振興の軸足をインバウンドにシフトする際の根拠としていた、国内客の安定(停滞)化、PPM図で言えば、「金の生る木(市場展開、拡大の資金などリソース調達の源)」の位置に、国内客が分布するのかを検証します。 その後は、計画に従い追加の調査を行い、1.先行研究と対応させ、沖縄県を再訪している国内客の特性を可能な限り明らかにし、誘客のヒントに繋げる、2.予算の許す範囲で、11の同県、地方の調査を都道府県単位に落とし込み、10年前の先行研究以来、有りそうで整備されてこなかった、国内リピート客市場における、都道府県のシェアに関するデータの整備、を行います。さらに、計画にはないものの、3.長期に渡る旅行体験に基づく本調査の結果と、コロナ禍を除く適当な時期の単年での結果を比較し、今後、同様の調査を毎年行った場合の精度を確認し、その意義をの検証したいと思います。
|
Causes of Carryover |
セキュリティの観点から実査自体が困難になる中、その補完としてWebモニター調査は日進月歩で進歩し、最近では、手軽で精緻な調査票の作成やスクリーニングの設計、実施が無料かつ容易に実施できます。モニターリストの管理などを活用すれば、調査に必要なサンプルも確実に揃えてくれるので、再調査がほとんど不要です。よって、調査票の設計、相談をはじめ、サポートの充実の代わりに初期費用が数十万円以上になる大手の調査会社を使用せずに済んだことが、次年度使用額が発生する物理的な理由です。 調査の点では、コア中のコアである11の同県、地方別の国内リピート客市場に占めるシェアの調査は終えたものの、当初、調査方法の確定が思うに任せなかったこと等もあり1.11の同県、地方別の国内リピート客市場に占めるシェア(比率)の統計学的な有意性の検証のための調査、2. (比較対象の調査結果に合わせた形の)沖縄県のリピート客の属性(同伴者)調査、3.「1」の調査を47都道府県に細分化しする調査、といった3つを中心に、付随するいくつかの調査が残っていることも、その理由です。 また、コロナ禍により、調査結果を国内外の研究者と検証する機会や、公表に向けた打ち合わせに必要な旅費等が、次年度以降(コロナ禍の状況にもよりますが)の執行となったことも、次年度使用額が生じた主な理由です。
|