2020 Fiscal Year Research-status Report
大規模災害からの観光復興に関する考察―電源地域・主に原子力の事例から―
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19K12584
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
千葉 千枝子 淑徳大学, 経営学部, 教授 (10779979)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 災害と観光 / 電源地域 / 原子力発電所 / ダークツーリズム / ホープツーリズム / 観光危機管理 / 観光復興 / パブリック・アプセスタンス |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新たに3本の研究論文を発表した。(1)「電力関連集客施設の観光特性とその検証 ―国内外の原子力PR 館等の事例から―」(第35回日本観光研究学会全国大会学術論文集2020年12月)、(2)「日台の電力広報施設における観光特性」(淑徳大学 教育学部・経営学部研究年報 第4号2021年3月)、(3)「震災・原発事故と観光―郷土を守る意識の発揚 釜石と葛尾村の事例から―」(日本観光研究学会機関誌「観光研究」vol.32No.2 2021年3月)である。拠って本研究に伴う研究論文は、2021年5月時点で5本となる。 また、2020年7月、(一財)電源地域振興センターの受託事業・伊方町観光施設運営支援業務の一環で開催された伊方町検討会の最終回(第8回)において、「伊方観光モデル―電源地域の観光拠点づくり 提案とまとめ」と題して、約60分間の基調講演を行った(オンライン開催)。 主な活字業績の具体的内容は次の通りである。(1)視察・ヒアリング、取材等から浮かび上がった電力関連集客施設の観光特性を、ポジショニングマップを作成して、その属性を検証した。(2)台湾における同様の施設、すなわちPA(パブリック・アクセプタンス)拠点を整理し、日台の比較を行うとともに、電力PA拠点のツーリズムとその類型をはかった。(3)2020年度は本研究と並行して復興庁の事業に取り組み、東日本大震災における被災地域(岩手・宮城・福島の三県)を延べ20日間の事業参加、視察・ヒアリングをするなどした。これらのことから浮かび上がった課題、震災・原発事故と観光についての相関性、過去の研究結果なども総合して事例をもって発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究進行2カ年目となる2020年度は、年度当初から新型コロナウイルスの影響で国内外における現地調査や対面によるヒアリングなどに制限がかかり、接触型となる郵送でのアンケート回収を見送るなど、幾多の研究手法を変更せざるを得なかった。特に海外事例の調査における研究視察は、2019年末に台湾の電力関連集客施設を訪問するのみにとどまった。区分としては(2)おおむね順調に進展している、としたが、新型コロナウイルスにより海外視察が困難な時期が長引けば、研究に支障がでるものと思料する。 一方で、論文発表、基調講演などのアウトプットに一定の成果を得ることができた。これまでの国内電源地域における観光振興の状況把握やPA拠点の情報収集が進み、これらを活字業績として発表した。また、基調講演としての講演発表を行うことができた。 上記理由の通り、国内電源地域の調査・研究の深耕へと一部、舵を切って研究を進めているが、そのなかでもとりわけ原発事故の被災地となった福島においては、広範に観光被害が及んでいることから、相双エリアに限定せず、県内で広く調査を進めることとした。2020年度は復興庁事業に参画したことから、旅費については復興庁の事業費ならびに所属機関の教育研究費等で賄った。当該事業では、未だ一部が帰宅困難区域である葛尾村等の観光現況を知ることとなり、研究を深化させることができた。そのほか、福島・磐梯熱海や母畑温泉、会津地方、いわき市等、岩手県全域等を、所属機関の教育研究費で賄っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020~2021年度に実施予定だった震災から10年のシンポジウムや、ウクライナをはじめとする英国、韓国等、海外原子力電源地域への視察調査は、新型コロナウイルス感染拡大という現況を鑑み、当面、見送らざるを得ず、当初の研究計画ならびに工程を練り直している。 そこで今年度は、国内電源地域の調査・研究の深耕へと一部、舵を切って進めている。 具体的には、国内電源地域PA拠点の調査を進め、ポジショニングマップ等の充実をはかる。日本全国約90カ所のPA拠点について、相関性の高い施設を現地調査する予定である。また、「観光と災害」におけるツーリズムの類型をさらに加速、精査をして、散逸するツーリズムの類型を体系化することに力点を置く。福島を中心とした原発事故エリアの観光被害概況は、相双エリアに限らず県内全域を調べて活字としてまとめる予定である。東日本大震災や福島第一原発事故の被災地での研究活動も去ることながら、疫病(新型コロナウイルス)まん延による観光被害も甚大であり看過できない。これら災害の規模・種別を注視して、それぞれの被災・被害における直接的要因と間接的要因を整理し区別をしながら観光被害の実態調査を行い、災害と観光を正しく記録にとどめ、観光復興がどのように進められてきたかを検証することが肝要であるものと思料する。今後は、これら観点から研究を推進する予定である。 そのため一元的なデータに頼らず、かつ現地調査を怠らずに、今後も慎重に研究を進めていく所存である。 なお、新型コロナウイルスの影響で今後も海外視察・海外研究活動が制限されるようであれば、研究期間の延長も視野に活動を推し進める考えである。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020~2021年度実施予定の、震災から10年のシンポジウム開催や、ウクライナをはじめとする海外原子力電源地域への視察を延期したことによるものである。今後は国内外の感染状況やワクチン接種状況、国際情勢等を鑑みて、当該研究期間において執行できるよう予定したいと考える。しかしながら今後も海外視察・海外研究活動が制限されるようであれば、研究期間の延長も視野に活動を推し進める考えである。
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Research Products
(6 results)