2022 Fiscal Year Annual Research Report
リビングヘリテージとその活用の多様性に関する比較研究
Project/Area Number |
19K12590
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西村 正雄 早稲田大学, 文学学術院, 名誉教授 (30298103)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | リビングヘリテージ / ラオス・チャンパサック / フィリピン・セブ / 遺産の活用の多様性 / 世界遺産 / ローカルノレッジ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、過去2年間と同様、コロナ禍の影響を受け、本来目的としていた現地におけるフィールド調査がほとんどできなかった。しかし、2022年度後半以降、状況は徐々に改善し、特にラオスにおける改善は著しく、政府の活動許可も得られた。2022年の12月と2023年の3月に、ラオスにおけるフィールド調査と、それと密接に関連する国際会議を行なった。一方、フィリピンについては、現地州政府の厳しい規制がまだ行われていたため、フィールド調査を行わず、文献による調査と、現地の研究者とのネットを介した意見交換にとどまった。 2022年度のラオスにおける調査のポイントは、現地の人々による遺産の活用に仕方、特に刻々と変わる自然環境、及び社会環境に対して、彼ら自身が持ち合わせてきた「知恵」(ローカルノレッジ)をどのように活用しながら柔軟に適応しているのか調べることであった。フィールド調査の場所は、ラオス南部の世界遺産地域(チャンパサック)であり、官民あげて観光を産業の中心に据えてきたところである。しかしコロナ禍のため、外国からの観光客が減少し、多大な影響をこうむった。フィールド調査では、そうした状況下で、二つの異なった反応を明らかにした。一つは、コロナ禍によって、早くに店じまいして撤退するものと、もう一つは、創意工夫で活動を続けてゆくものであった。チャンパサックでは、後者の活動が目立った。前者の早々に事業を辞め、観光業から撤退する人々の多くは、近年ラオス外から移住してきた人々で、多くがラオスに来ていながらも、外国(欧米、あるいはタイなど)とつながりを持っていることであった。一方、そうした繋がりを持たず、代々チャンパサックに暮らす人々は、彼らの過去からの知識を何とかそうした状況で生かそうとする試みがあった、このことから、まさにローカルノーレッジを持つものの適応力が良く活用されているものと考えた。
|