2019 Fiscal Year Research-status Report
Gender and Ideology in Japanese women's poetry of the Asia-Pacific War
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19K12607
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
菊地 利奈 滋賀大学, 経済学部, 教授 (00402701)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文学 / ジェンダー / 近現代詩 / 女性詩 / 翻訳学 / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究計画に沿い、アジア太平洋戦争中に発表された女性詩人作品の分析・英訳をすすめた。2019年11月、日本近代文学会・昭和文学会・社会文学会合同国際研究集会「文学のサバイバル──ネオリベラリズム以後の文学研究」にて、口頭発表「Women's War Poetry研究における日本女性詩人によるアジア太平洋戦争詩がしめる位置と意義 ―フェミニズムとインペリアリズムの視点から―」をおこなった。また、同年12月、1940年11月に出版された『現代女流詩人集』に掲載された、戦争をテーマに扱った詩を分析した英語論文「Early Women's Poetry of the Asia-Pacific War : Poems from Contemporary Women-stream Poets Anthology」を『彦根論叢』(422号)に掲載、公開している。 戦中にも活躍したフェミニスト詩人・生田花世についてインタビューを受け、その内容が2020年3月『とっとりNOW(vol.125)』に「情熱に生きた「新しい女」たち―女流作家・田中古代子と生田花世」として掲載された。 その他、今後、海外日本文学研究の場でも日本女性詩人が書いた戦争詩研究が発展するよう、アジア太平洋戦争中に発表された女性詩人の戦争詩の英訳をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究計画としてかかげていた学会発表と、英語論文一本を執筆できたので、まずまず予定通りに進捗しているといえる。また、一般誌で戦前の女性文学者が扱われることは稀であるので、生田花世とフェミニズムについてインタビューが『とっとりNOW』に掲載されたことも意義があると考えている。 とはいえ、戦中の女性詩についての研究は先行研究がほとんどなく、また、戦中に発表された詩作品の数が膨大なことから、当初予定していた以上に成果発表までには時間がかかるかもしれない。学会での研究発表では、『現代女流詩人集』(1940年)に収録された、江間章子(1913-2005)や上田静栄(1898-1991)の作品を中心に発表した。1941年12月の開戦前に出版されたこともあり、「戦争詩研究」で注目されてこなったこのアンソロジーを取り上げたことは好評で、知られざる一面を明らかにできたと思うが、同時に「あせらず長い目で取り組んだほうが良いのではないか」という指摘も受けた。 また、女性が書いた戦争詩の日英アンソロジーを編みたいと思い、英美子(1892-1983)や生田花世(1888-1970)の戦争詩の英訳をすすめているが、著作権の問題もあり、こちらも計画していた以上に長期戦になるかもしれない。 2019年度については、3月にカリフォルニアへの出張を予定していたが、新型コロナウイルスのため、予定を大幅に変更し急遽帰国することになった。2020年以降についても、海外での研究発表や、共同研究を予定していたが、見通しが立たないため、研究の遅延や研究計画の変更につながる恐れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は『現代女流詩人集』(1940年)に収録された戦争詩について論考・論文をまとめたので、2020度以降は、『母の詩』(1941年)、『新女性詩集』(1942年)、『海の詩』(1943年)と、アジア太平洋戦争中に出版された女性詩アンソロジーを中心に、日英両言語で作品分析をすすめていく予定である。英美子や生田花世の作品に加え、永瀬清子らの戦争詩も英訳し、分析をすすめたい。 また、詩作品の英訳については、今後、より大きな視点で「アジア太平洋戦争」を海外日本文学研究の場で論じることが可能になるように、敗戦後に女性詩人らによって発表されたアジア太平洋戦争関連の詩作品も含めたうえで、翻訳をすすめていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年3月に予定していた海外出張において、新型コロナウイルスのために滞在予定が大きく短縮されたため。
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Research Products
(3 results)