2020 Fiscal Year Research-status Report
Multidirectional anaysis on Farmer's wives as human resorces for the rural care business.
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19K12613
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
姉歯 暁 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40259221)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 農村ジェンダー / ジェンダー平等政策 / スウェーデン / 農家女性 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度前半は中国・武漢近郊農家および湖北省の女性が所有する農地などを視察し、武漢の都市閉鎖の間にコミュニティーが果たした機能の特徴を抽出するとともに、都市封鎖が近郊農家に及ぼした影響を検証した。その成果は調査報告として学術雑誌に掲載された。 また、スウェーデンにおける農村女性のジェンダー平等の現状と課題を、経済史および社会福祉政策に焦点をあてながら日本の農村ジェンダー形成過程との比較をおこなっている。パンデミックで農家に直接インタビューを行う機会は少ないが、スウェーデンのルンド大学に集積されている家族政策、ジェンダー平等政策を研究しているグループとの共同作業を通じて、農村ジェンダーを決定づける家父長制的家族関係やこのシステムから女性を解放する政策や歴史的出来事をまとめつつある。現在のところ、次の点が明らかになってきている。 第1に、農村女性のジェンダー平等を決定づける政策として、農業政策、なかでも起業促進策は有効性を持たないことが明らかになっている。第2に、農村におけるジェンダー平等の実現のためには都市部を含めて全国的な育児・介護の社会化を進めること以外にはないこと、加えて、農村部独自のより強力な政策決定が必要であることを、スウェーデンとの比較を通じて明らかにした。第3に、日本で農村におけるジェンダー平等を阻んできたものの一つに、戦争と戦後の占領政策の転換、さらには生活改善運動があげられることなどを明らかにした。 成果の報告:これらの成果はルンド大学社会学部主催のセミナーにおいて報告を行っている。(報告日、4月21日、オンラインにて開催、スウェーデン、ルンド大学社会学部)また、農協協会JA.comにて複数回の新聞紙上への掲載、株式会社 経済法令研究会出版事業部編集・発行の「JA金融法務 」5月号への掲載などを通じて発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビューなど、オーラルヒストリーの収集はできないものの、ルンド大学の恵まれた研究環境のもとで、現在の農家(若手の農家を中心とした)のジェンダーが世代を超えて受け継がれていることや農地の集積と分散が同時に生じていることなど、ミクロとマクロ両者のレベルで見た農業の変化に関する研究が可能だった。そのため、これまでにない視点を数多く得ることができている。デンマークもフィールドの中に含めていたが、現時点では国境を越えることは難しいため、パンデミック対策が緩和される時期を待ってデンマークの調査を再開したいと考えている。すでに訪問すべき農家も選定済みであり、時期が来れば直ちに開始できるものと考える。
昨年9月以降滞在・研究を行なっているスウェーデンのルンドは南スウェーデンに位置している関係上、5月以降農村の訪問調査が可能である。感染に気をつけながらではあるが、スコーネ県(ルンドを含む地域)の農村地域の概観調査、また女性農業者および農業団体へのインタビューを試みることになっている。
同時に、農村女性のジェンダーについては日本では考えられないほど広い視点での研究が進められており、その成果を資料を通じてまとめる作業を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の視点で研究を進めていくつもりである。 1、スウェーデンにおけるジェンダー平等政策、中でも家族政策の歴史的変遷とその効果を研究し、それが農村ジェンダーの変化にどのような効果をどのような経路をたどってもたらしたのかを明らかにする。 2、日本における農村女性のジェンダーの変化を阻む要素について、さらにスウェーデンとの比較を通じた検証をさらに進める。 3、農業法人と家族農場におけるジェンダーをスウェーデンとの比較を通じて、その相違を明らかにする。この問題は、土地と家父長制の繋がりをどうみるのかを明らかにするためにも必要な作業である。 4、スウェーデンにおいては、農村独自のジェンダー政策は存在しないと言われている。しかし、60年代から80年代までは農村女性がエルダリーケアの担い手として公的労働者としての経験を積んでいた。それが90年代以降の新自由主義のもとで削減された福祉予算の影響をどのように受けたのか、その結果として、農村における農外収入獲得の場にどのような影響を与えているのかと言った問題を明らかにするつもりである。これらの作業は日本とスウェーデンの資料、ならびに、ウメアにあるSLU(スウェーデン農業科学大学)森林資源管理学科 森林資源分析部の研究者らとの交流を進めるなかで行われる予定である。また、スウェーデン農業委員会には現在、農村ジェンダーに関する研究プロジェクトが組織されており、資料の紹介などを受けている。これらの研究グループとも連携していくつもりである。
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Causes of Carryover |
コロナによるパンデミックで予定されていた現地調査がほとんどできないことで、次年度に調査がずれ込むこととなり、予算を延長して使用することとなった。また、現在在外研究中であり、スウェーデンの国境政策に調査環境が左右されていることを加えておきたい。
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Research Products
(4 results)