2019 Fiscal Year Research-status Report
「第三者の関わる生殖技術」の利用をめぐる開かれた議論の構築
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19K12615
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
柳原 良江 東京電機大学, 理工学部, 助教 (30401615)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 代理出産 / 卵子提供 / 生殖技術 / 第三者の関わる生殖技術 / 多国越境生殖 / フェミニズム / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
代理出産や卵子提供(卵子購入)といった「第三者の関わる生殖技術」に関する文化表象の収集を進め、そこから得られたデータを元に、当初の予定の一つである、日本の議論に関する理論分析を行った。 特に日本における商業的代理出産や卵子の購入において、その利用対象となる外国人女性が、どのような文化的構造により利用可能とされているのかを分析した。その結果、欧米人(アメリカ人女性、メキシコ人女性、ロシア人女性、ウクライナ人女性)と、アジア人(インド人、タイ人)では異なる認識がなされており、2000年代後半から、アジア人の利用については問題視されるも、欧米人は利用可能とみなす文化的認識が生じていることが判明した。 近年グローバルなマーケットを構築する、多国越境生殖(transnational reproduction)の動向と、それらに対する人々の認識を把握するため、欧州を中心に国際的に代理出産に関する問題提起を行うグループにコンタクトを取り、各国の現状と、活動実態について調べた。また欧州ほど組織的ではないが、豪州や米国における研究者や活動家による議論について把握した。その上で、グローバル化した女性の身体利用に対しフェミニズムが提示する理論に関する文献調査を行った。 上記調査を踏まえ、日本の実証調査結果を、グローバルなフェミニズムの文脈に配置し、東アジアの代理出産に関する文化を提示した。欧米文化を前提とした理論構築に留まりがちな、現行のフェミニズムを相対化するためである。その結果、「第三者の関わる生殖技術」の問題群において適用される現行のフェミニズムは、たとえポスト・コロニアルフェミニズムにあっても、従前の「グローバル・ノース(≒欧米)vs. グローバル・サウス(≒それ以外)」の二元論に留まっており、グローバル・ノースとサウスに再編が起きている現状に、十分に対応出来ていないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
欧州各国で活動中の、複数の女性団体にアクセスした結果、さらに国際的に動いている女性運動団体を2つ紹介してもらった。また国際学会を通じて、中米・南米の研究者とも面識を得る事が出来、今後、さらにグローバルな文脈での女性活動や人権運動について把握する基盤を構築することが出来た。 南アジアの研究者や団体との人脈も強まり、グローバル・サウスにおける多国間生殖技術の現状と、そこで行われる議論や、ポスト・コロニアルフェミニズムについての限界について理解することが出来た。 文献調査では、グローバル化した文脈におけるフェミニズムの最新の動向について、専門家からのアドヴァイスも得て、予想以上の見識を得る事ができた。それらの知見の一部は、既に国際誌の投稿論文として受理され印刷中である。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルスの流行により、当初予定していた南アジア/東南アジアの調査は実施が不可能となった。それゆえ本年度は、昨年度までに得られた知見や人脈を元に、欧米の女性団体の人々とオンラインによる意見交換を行うことで、状況把握のアップデートを行う。それらの人々によるアドヴァイスを元に,現地で行われる人権運動に関する文献調査を実施する。 理論面では昨年度と同様に文献調査を進め、更なる理解と、理論の応用・展開に努めていく。ただし国外の文献の入手や閲覧について、コロナウイルス流行に伴う困難が懸念される。それに従って,理論的展開に若干の遅れが生じる可能性がある。それら文献調査の遅れは、次年度へ持ち越す形を予定している。
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Research Products
(2 results)