2021 Fiscal Year Research-status Report
「第三者の関わる生殖技術」の利用をめぐる開かれた議論の構築
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19K12615
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
柳原 良江 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (30401615)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 代理出産 / 卵子提供 / 生殖アウトソーシング / 当事者 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度に実施した作業は主に以下の3点である。 (1)論考の発表:日本の代理出産の歴史と現状について、書籍出版プロジェクトの公募に応募し、英語による論考を同団体が出版する書籍の1章として発表した。この論考は書籍の形で出版されたが、公募主体の国際団体による査読、さらに出版社の査読と2回の査読を経ている。2021年度後半は、同論考のフランス語版制作も進め、年度をまたぎ2022年5月に出版された。同論考により、これまでは「欧米先進国内の議論」と「生殖アウトソーシングの是非」で語られていた代理出産の議論に、新たな概念軸を導入したと考える。筆者の論考は同書の冒頭近くに掲載され、出版社のHPでも取り上げられており、関係者から高い評価を得たものと考える。 (2)訳書出版:コロナ禍で国際的なイベント実施が不可能となったため、当初の予定を変更し、英語圏で出版された、当事者たちの証言集の日本語版を制作することにした。原著に纏められた証言は、米国をはじめとする先進国はもとより、かつて世界のアウトソーシング先として人気を集めたインド、さらには2021年現在、代理出産アウトソーシング産業の世界的なハブとなっている東欧など、多様な国の当事者から得られたもので、代理出産の実態を示す貴重な資料である。この訳書出版により、これまで光を当てられなかった当事者たちの声を議論に反映させることを期待している。翻訳作業は2021年度初頭から始め、年度末には全ての章の翻訳が終了した。翌年度に入稿し出版の運びである。 (3)単著出版準備:これまでの研究成果をまとめた単著を出版するため、過去の原稿や新たな研究調査結果を入稿用データに纏めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度に予定した3つのプロジェクトのうち、(1)にあたる英語での論考発表は問題なく終了した。同プロジェクトによるフランス語版出版作業も無事に進み、2022年4月に出版された。 一方で、自らが監訳者となって進めている、(2)の証言集日本語版翻訳プロジェクトは、途中で事務的な問題が生じ、全体の進行に遅れが生じている。とりわけ大きな影響を与えたのが、版権取得の際、仲介業者と海外/国内の出版社間で、事務的なトラブルが生じたことである。それを解消するため、予想以上の時間と労力を要した。本来この訳書は2021年度内の完成を目指していたが、スタートアップで遅れたが生じたことにより、その後の作業全体も遅れた。ただし版権を取得し事務的な問題が解決した後の、翻訳・編集作業といった研究活動は順調に進んでいる。また訳書制作で、予期せぬ労力を要したことにより(3)も遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)については、英語とフランス語で出版した論考を、今後、スペイン語とドイツ語でも出版する予定である。それらの翻訳作業は専門家が実施する予定で、筆者は確認のみであるため、本件については順調に進むことが予測される。 (2)の当事者の証言集の翻訳プロジェクトは、2022年5月現在、すでに出版社に入稿済みである。今後予定される作業は、校正を含め事務的な作業であるため、今後は特に研究計画の変更や困難な課題などなく、問題なく進められると考えている。 (3)は訳書が出版され次第、本助成金に関する全てのエフォートをこの作業に集中させ速やかに進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際イベント開催が、コロナ禍により2021年度も実行不可能となった。そのため招聘予定だった研究者も関わっていた洋書の翻訳書制作に切り替えた。訳書制作にあたり、版権取得作業が必要だったが、オーストラリアの版元と、日本の版元の間に入った仲介業者が、両者からの連絡に返事をしなかったり、互いの版元の依頼内容とは異なる条件で契約を結ぼうとするなど、業者によって版権取得作業に問題が起きた。その事実把握に加え、それぞれの版元に対して説明をするなど、事態収拾のため数ヶ月を要した。その結果、翻訳プロジェクトの開始時期が遅れ、年度内の出版が不可能となり、助成金を繰り越す必要が生じた。翻訳プロジェクトに予想以上に時間と労力を取られたことにより、併行して進めていた単著の出版も大幅に遅れている。繰り越した助成金は、訳書の出版と単著の編集作業に用いる。
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Research Products
(2 results)