2022 Fiscal Year Research-status Report
性的マイノリティをめぐる寛容性と不可視性―社会意識と居場所の社会学的考察
Project/Area Number |
19K12617
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
石原 英樹 明治学院大学, 社会学部, 教授 (20282494)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性的マイノリティ / 寛容性 / マッチングアプリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究には二つの問いがある。一つは(1)LGBTQ+(性的マイノリティ)当事者の意識だけでなく、性的マイノリティに対する社会意識(社会の寛容性の可視化、身近な領域での差別の不可視化など、多様性と排除など)を日本社会において明らかにしその要因を解きほぐすことである。これは多様性が上昇しているといわれる日本の現状が日本の特殊性によるのか、複雑な文化的要因が影響しているのかという、より広い社会意識論につながっていく。10年間の研究期間の間に劇的に社会状況は変化している。意識がそれにつれて大きく変わったのか、変わらない部分は何なのかを明らかにする。もう一つの目的は(2)LGBTQ+の生きづらさに対応する居場所が必要であるという先行研究を受けてその実態と意義を明らかにすることである。本年は(1)に関しては従来の「世界価値観調査」に加えて、「性的マイノリティについての意識:2015年(第1回)および2019年(第2回)全国調査」を、釜野さおり氏(社会保障人口問題研究所)らの好意により使用することが許可された。このデータをもとに過去の研究を再検討した。(2)については、二つの実績があった。一つは大学における性的マイノリティの居場所を確保するための公的なルールづくりを継続し、満足のいくものが得られた。2023年度はこの実装を目指す予定である。もう一つは、バーチャルな出会いの場としてのマッチングアプリ(online dating)の研究を行った。特にゲイのマッチングアプリが異性愛者向けのそれよりも以前から盛んに使われたことが知られている。アジアの研究文献でもゲイのアプリの分析が進んでおり、それらには性的な目的以外にも、「仲間をつくりたい」などの意図がみられることが明らかになった。新宿二丁目のゲイバーとアプリの役割分担がコロナ期にすすむなど、興味深い事情が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 (1)釜野氏らのデータ入手が遅れたため本年度内の分析が終了しなかった。 (2)大学の性的マイノリティサポートのためのルール作りは、メイン概念をSOGIにすることを多くの当事者やカウンセリング担当職員から指摘されたことで大きく書き換わることになった。これはLGBTQ+をめぐる事情が急速に変わってきたことの証左であり、この変化そのものを分析することも重要であると思いいたったが、あと1年延長して分析することの必要性に思い至ったものである。 (3)マッチングアプリ(online dating)に関しては主に異性愛者のそれの使用者へのインタビューを行い、成果の発表を予定しているが、そちらに時間を費やしてしまったため、ゲイなど性的マイノリティのアプリ研究は今のところ日本やその他の国の先行研究の収集しかできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)については、「世界価値観調査」と「性的マイノリティについての意識:2015年(第1回)および2019年(第2回)全国調査」の双方を使って、日本人の性的マイノリティについての意識分析を完成させたい。(2)についてはルールの大学での実装に前後して、大学生の意識についてパネル調査を行いたい。(3)マッチングアプリ(online dating)については、当事者のインタビューを行い、異性愛者のアプリにおける選択条件との比較を行う予定である。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況がやや遅れており(コロナなどの理由)、追加の社会調査、報告の海外での発表予定などを行うため。
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Research Products
(2 results)