2021 Fiscal Year Research-status Report
A sociological study on the influence of early spontaneous abortion over women's views on life and death, reconstructing of lives
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19K12625
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Research Institution | Fukuoka Women's Junior College |
Principal Investigator |
加藤 朋江 福岡女子短期大学, その他部局等, 准教授 (90296369)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 早期自然流産 / 流産 / 妊娠 / 出産 / 生殖補助医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度より(1)日本における早期自然流産の歴史社会学的研究、(2)web上の流産関連データの分析を続けている。2021年度はここに(3)オンラインでの聞き取り調査の可能性の模索という作業も加わった。 (1)については、全国紙のデータベースをもとに新聞記事の中に現れる「流産」関連の記事について蒐集した。こちらについては2022年度内に計量テキスト分析及び内容分析の手法を用いた研究報告を発表予定である。(2)については、「早期自然流産」について当事者へのケアという視点で執筆された論文・雑誌記事を各種データベースを用いて調べ、(1)の分析結果を支える資料としている。(3)については、2020年度以降、教育・研究の領域で急速に普及したオンラインでの会議システム(Zoomなど)を用いた聞き取り調査について海外での動向を踏まえながら、対面での会議との違いや共通点、web調査の強みについて考察した。 2021年度の作業は資料の蒐集やデータベースの構築という側面が主であり、本格的な分析は次年度以降に持ち越されるが、さしあたり次の点を研究成果として挙げることができる。 ①1870年代より流産は新聞の記事の上で繰り返し報道される話題であり、明治・大正・昭和初期(戦前期)においては「比較的進行した妊娠」が何らかの事件・事故によって中断される「不幸な出来事」として現れる。②戦後すぐの人口転換期においては、人工流産(妊娠中絶)の記事が目立つ。③1990年代以降は生殖補助医療の過程における流産や不育症など自然流産それ自体の治療・助成に関連する記事が増える。④全期間を通じて「人生案内」(相談)の中でも流産は当該の女性たちにとって無視できない人生上の出来事として語られている。⑤政治や行政の領域で成就しなかった案件を「流産」という言葉で表現する慣行も古くからあり、2000年代に入ってもそれが見受けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度においては、研究補助者の雇用によって新聞記事データベースからの流産関連記事の蒐集がある程度進んだことと、大宅壮一文庫のデータベースを活用することで、雑誌記事における流産関連記事の蒐集も進んだ。これらは昨年度の「今後の推進方策」として挙げていたものであり、ある程度はうまくいったという事ができる。 また、海外における自然流産 miscarriage についての人文・社会科学領域の研究についてもPDF化されており閲覧・保存が可能な論文等を集めることができた。 加えて、対面では難しくなっていた自然流産経験者や医療関係者への聞き取り調査についても、オンラインでの実施を含めて方法論や先行事例について考察することができ、これについては論文にまとめることができた。以上の理由で、2021年度においては予定通り研究を進めることが出来たということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、先述した新聞記事データベースからの知見を学会での口頭発表で報告すること、及びそこでの議論を踏まえて論文作成し学術誌に投稿することを予定している。口頭発表については、既に6月の第70回関東社会学会大会の「身体」の部会において報告をエントリーしている。また、この報告と当日の質疑を踏まえた論文を『年報社会学論集』等に投稿予定である。 また、宅壮一文庫のデータベースに基づいた「流産」に関係する雑誌記事のデータベースを作成しており、これを基に雑誌記事それ自体についても何らかの方法で蒐集することを予定している(大宅壮一文庫もしくは国会図書館等での複写など)。 併せて、オンライン・インタビューについても医療関係者を中心に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
申請時の2018年度においては、新型コロナウィルス感染症の流行が想定されていなかったため、研究活動には常に移動が必要であり、そのため旅費を多く計上していた。2020年度以降は移動の制限やオンライン会議の普及によって、この部分の予算を他の費目に振り替えざるを得ない状況である。現在、オンラインによる会議及びデータベースの検索と新たな構築によって新たなコンピュータや周辺機器の増強が必要であるため、一部を物品費に振り替える必要がある。 また、昨年度同様、データベースの検索と構築のために研究補助の人員の確保が必須であり、そのための謝金も確保する必要がある。
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