2019 Fiscal Year Research-status Report
回折限界を超える逆位相コンポジットゾーンプレートの実用設計
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19K12630
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
篭島 靖 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (10224370)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | X線光学 / X線顕微鏡 / ゾーンプレート / 回折限界 / 回折積分 |
Outline of Annual Research Achievements |
基盤研究(C)「回折限界を超えるX線用回折格子型集光素子の提案とシミュレーションによる原理検証」(H28~30年度)において、空間分解能の劣化を抑えつつ焦点深度を拡張可能な新しいタイプのX線光学素子である Inverse-phase composite zone plateを発案し [査読付Proc]、シミュレーションを実行し空間分解能の劣化を8%にとどめ焦点深度を2倍にできる設計値を発見した[査読付論文]。これにより当初の研究目的は達成された。しかしその設計値はゾーンの格子構造の最大アスペクト比が30を超えており、現状の加工技術では製作が困難である。本研究では、現状の加工技術で製作可能な回折限界を超える空間分解能と焦点深度が得られる実用性のある設計値を見いだすことを目的とする。 令和元年度の研究では、①複数のパラメータを網羅的に変化させて計算できるプログラムの開発、②設計パラメータの探索を進めた。①の概要:パラメータを網羅的に変化させる準備段階まで進んだが完成には到らなかった。②の概要:ゾーンの格子構造のアスペクト比を製作実績のある8に設定して、空間分解能と焦点深度の期待値を求めた。回折格子の材料はタンタル、X線のエネルギーは8から12 keV、目標の空間分解能は100 nmとし、焦点距離としては実用性を意識し長めのワーキングディスタンスを確保できる約50 mmとした。計算の結果、光軸上の強度はアスペクト比が30の場合の13%程度とかなり低くなるものの、空間分解能と焦点深度は概ね維持されることがわかった。 これらの成果を国際シンポジウム1件と国内会議1件にて発表した。さらに、国際会議(XRM2020, 19-24 July 2020, Taipei)にて発表を予定し、査読付プロシーディングス原稿も投稿したが、国際会議がキャンセルされ原稿もキャンセルとなってしまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複数のパラメータを網羅的に変化させて計算できるプログラムがまだ完成していない。 一方、これまでに開発済みの計算プログラムを用いて、ゾーンプレートの格子構造のアスペクト比を製作実績のある8に設定して、空間分解能と焦点深度の期待値を求めた。回折格子の材料はタンタル、X線のエネルギーは8から12 keV、目標の空間分解能は100 nmとし、焦点距離としては実用性を意識し長めのワーキングディスタンスを確保できる約50 mmとした。計算の結果、光軸上の強度はアスペクト比が30の場合の13%程度とかなり低くなるものの、空間分解能と焦点深度は概ね維持されることがわかった。これにより、1つの有望な実用設計値は得られた。今後、より高い性能を達しうる実用設計値を探索する。
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Strategy for Future Research Activity |
①複数のパラメータを網羅的に変化させて計算できるプログラムを完成させる。 ②設計パラメータの探索を続ける。 ③成果化:日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムにおいて研究の進捗状況を発表する。 発表を予定していた国際会議(15th International Conference on X-ray Microscopy; XRM2020)がキャンセルとなり、それに付随する査読付きプロシーディングスの投稿もキャンセルとなってしまったので、本研究の研究期間内での主要関連国際会議での発表は困難となった。設計パラメータとシミュレーション結果の論文化を図る。
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Causes of Carryover |
第15回X線結像光学シンポジウムにて他の研究成果も発表し、旅費をその研究費と折半したため残額が生じた。
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Remarks |
新型コロナウイルス禍で国際会議に参加できなかった.予算に計上した参加登録費,旅費等を返還したい.手立てを講じていただきたい.
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