2020 Fiscal Year Research-status Report
Liquid dynamics in ionic liquid based nanofluids
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19K12632
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
吉田 亨次 福岡大学, 理学部, 准教授 (00309890)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ流体 / 中性子散乱 / ダイナミクス / X線散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体などの液体に数%のナノ粒子を分散させたものはナノ流体と呼ばれる。ナノ流体は純液体に比べて熱伝導率が高いことが報告されており、本研究では、時間と空間の両方の情報が得られる中性子非弾性・準弾性散乱およびX線非弾性散乱を手段として用い、分子間のミクロな相互作用に基づいた液体のダイナミクスを観測し、ナノ流体のマクロな性質(熱伝導率や粘性率)との関連性を明らかにする。この目的のために本年度はSPring-8およびJ-PARC/MLFにおいて酸化ジルコニウム-水ナノ流体、パラジウム-水ナノ流体、およびイオン液体をベースとしたナノ流体のX線非弾性散乱ならびに中性子準弾性散乱測定をそれぞれ行った。X線非弾性散乱よりナノ流体を構成する液体のフォノン励起を、中性子準弾性散乱から液体分子の並進および回転運動を観測した。バックグラウンドの低い良好なデータを得るために、X線非弾性散乱ではサファイアセルを用いた。中性子散乱では通常はアルミセルが用いられるが、酸化ジルコニウムー水ナノ流体は酸性を示すため、ガラスセルを用いて測定した。 酸化ジルコニウム-水からなるナノ流体では、ナノ粒子の濃度の増加ともに水分子の並進運動が抑制された。ナノ粒子表面と水分子の引力的相互作用が示唆される。一方、水分子のフォノン励起に対するナノ粒子の影響は小さかった。イオン液体にナノ粒子(アルミナおよびカーボンブラック)を分散させたナノ流体では、イオン液体のフォノン励起および並進運動は純粋なイオン液体とほとんど違いが見られなかった。今後、これらの系で液体の回転運動を測定し、液体分子の運動モードの違いとナノ流体のマクロな性質とを比較して考察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イオン液体で構成されるナノ流体の溶媒のダイナミクスを中性子準弾性散乱で測定したところ、ナノ粒子が含まれていない系との差がほとんど見られなかった。この原因として。ナノ粒子の濃度が低いため、バルクのイオン液体の散乱が大きいことが考えられる。ナノ粒子の濃度が高い試料を調製するなど、検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ粒子の濃度が高い系についての中性子散乱の測定を計画している。単にナノ粒子の濃度を上げただけでは沈殿が生じるため、ナノ粒子の種類や粒子サイズを検討し、安定した分散状態を持つナノ流体を測定対象とする。また、分子動力学シミュレーションなどの理論計算も行い、実験結果を補完するデータを取得する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、海外の中性子施設での測定が中止となったことと、国内の中性子施設で十分な測定機会が得られなかったのが原因である。今後はコンピュータシミュレーションなど計算科学的手法も取り入れ、実験結果を補完するデータを取得する計画がある。そのため、ワークステーションを購入する予定である。
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