2021 Fiscal Year Research-status Report
Liquid dynamics in ionic liquid based nanofluids
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19K12632
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
吉田 亨次 福岡大学, 理学部, 准教授 (00309890)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ流体 / ダイナミクス / 中性子散乱 / X線非弾性散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
水をはじめとする分子性液体やイオン液体に数%のナノ粒子を分散させたものはナノ流体と呼ばれる。ナノ流体は純液体に比べて熱伝導率が高いことが報告されており、本研究では、時間と空間の両方の情報が得られる中性子非弾性・準弾性散乱およびX線非弾性散乱、ならびにNMR緩和時間測定を手段として用い、分子間のミクロな相互作用に基づいた液体のダイナミクスを観測し、ナノ流体のマクロな性質(熱伝導率や粘性率)との関連性を明らかにする。 この目的のために本年度はSPring-8において、各種の分子性液体のX線非弾性散乱を測定し、ならびに酸化ジルコニウム-水ナノ流体、酸化チタン-水ナノ流体の17O-NMR緩和時間の測定を行った。前者からは液体のフォノン励起を明らかにし、分子構造との関連を調べた。後者からはナノ流体を構成する水分子の回転拡散を調べ、それに対するナノ粒子の影響を明らかにした。30 wt%の酸化ジルコニウム-水ナノ流体では、純水の場合より緩和時間が短く、水分子の回転拡散が抑制されていることが分かった。また、15 wt%の酸化チタン-水ナノ流体でも、水分子の回転拡散が抑制されていることが示された。このことからナノ粒子表面に存在する水分子はナノ粒子からの引力的相互作用を受けていることが示唆される。これは、前年度に実施した中性子準弾性散乱から得られた結果と一致している、また、緩和時間の温度依存性から求められた水分子の回転の活性化エネルギーは純水よりも減少した。ナノ粒子の近傍ではバルク水の比べて、水の構造性が弱まっている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
種々のナノ粒子やイオン液体を含む種々の液体の組み合わせでナノ流体を合成し、液体のダイナミクスを測定する計画であったが、純液体と差が小さく、違いを見出すには至らなかった。おそらくバルク液体の寄与が大きいためだと思われる。液体のダイナミクスに対するナノ粒子の影響を明らかにするためには、ナノ粒子の濃度を上げる必要があるが、ナノ粒子の凝集が生じたため、本研究に適した試料の合成には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
室温から80℃までの温度において、水系のナノ流体の17O NMRの緩和時間測定を行い、水分子の回転運動の活性化エネルギーを測定する。ナノ粒子の違いによる水分子の回転ダイナミクスの違いを調べ、水の構造との関連を明らかにする。 並行して、ナノ流体の分子動力学シミュレーションを行い、ナノ粒子近傍の水分子のダイナミクスを調べる。実施にあたっては、計算シミュレーション専門家から知識の提供を受ける予定である。
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Causes of Carryover |
種々のナノ粒子やイオン液体を含む種々の液体の組み合わせでナノ流体を合成し、液体のダイナミクスを測定する計画であったが、ナノ粒子の濃度を増加すると、ナノ粒子の凝集が生じ、高濃度のナノ流体が得られなかった。 試薬メーカー等から販売されている高濃度のナノ流体を購入し、NMR緩和時間の測定を行う。また、計算シミュレーション専門家から知識の提供を受け、ナノ流体の分子動力学シミュレーションを行う。
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