2020 Fiscal Year Research-status Report
1-5 keV 全域でブラッグ条件を満たす高出力多層膜回折格子分光器の開発
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19K12642
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
羽多野 忠 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 助教 (90302223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 雅人 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 客員教授 (50354973)
江島 丈雄 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 准教授 (80261478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テンダーX線 / 多層膜 / 回折格子 / 分光器 |
Outline of Annual Research Achievements |
テンダーX線多層膜回折格子分光器に最適な多層膜材料、周期膜厚、周期数、回折格子刻線密度、曲率の他、分光器の幾何学的パラメーターを以下の手順で決定することが本研究の目的である。まず平面基板にW、Cなどの候補物質群から交互多層膜を成膜し、その反射率を斜入射配置で測定して高反射率が得られる条件を探索する。厳選された多層膜を中心に回折効率の計算機シミュレーションを行い、高回折効率を生む多層膜を探索する。次にテスト用回折格子基板に多層膜を成膜し、ブラッグ条件を満たす入射角、出射角の配置で回折効率評価を行って多層膜の仕様を決定する。最後に、回折効率実測値を基に高出力を生む分光器パラメーターを決定し、さらに回折格子刻線の不等間隔パラメーターを導入して収差を極小にする。 2020年度は前年度に測定したW/C、W/Si、Re/Si多層膜反射率について未測定の4 keVでの測定を実施した。また、Re/C、W/B4C、Re/B4C、Co/SiO2の20周期多層膜を平面基板の上に作製して1、1.5、4、6、8 keVで反射率測定した。本測定に先立って20 keV硬X線用W/B4C多層膜を作製し、シリコン二結晶分光器を採用した硬X線ビームラインPhoton FactoryのBL-20Bにおいて、多層膜反射率計測により4 keV出力条件での3次光、4次光、5次光由来の信号強度を計測し、4 keV反射率の較正データを取得した。Co/SiO2多層膜は他に比べて2/3倍程度の反射率しか得られず、2021年度に実施する回折格子へのコーティング候補からは除外することとした。また、0.7 keVの軟X線でCを保護膜として最上層に追加したW/C多層膜回折格子の予備実験を行って良好な結果を得た。最上層をC、B4C、Siのいずれかとする構造を採用する方針が定まった。 主な経費はReのスパッタリングターゲットであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料作製と性能評価が予定通りに進んでおり、予め見込んでいたレベルの結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はWまたはReの重い元素とCまたはB4CまたはSiの軽い元素の多層膜を回折格子の表面に積層し、ブラッグ条件を満たす入射角、出射角の配置で回折効率評価を行って多層膜回折格子の仕様を決定する。これまで軟X線回折格子で標準的な刻線密度2400 本/mmを想定してきたが、3200 本/mmの高刻線密度の回折格子も比較的容易に得られることがわかってきた。刻線密度2400本/mm回折格子と周期膜厚6 nm多層膜の組み合わせと刻線密度3200本/mm回折格子と周期膜厚5.5 nm多層膜の組み合わせで高回折効率の条件を決定する。
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Causes of Carryover |
多層膜作製に使用する成膜装置に必要なターボ分子ポンプの不具合が2020年度後半に発生した。2021年度での機器更新に備えるため、同装置のイオン銃部品の保守期間を延ばして使用した。
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Research Products
(5 results)