2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of real-space dynamical analysis by inelastic neutron scattering experiment and its application to condensed matter physics
Project/Area Number |
19K12648
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中村 充孝 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (00370445)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 実空間ダイナミクス解析 / 中性子非弾性散乱実験 / ネットワークガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子非弾性散乱(INS)実験による実空間ダイナミクス解析手法の確立と物性研究への応用を本研究課題の主目的と定め、研究開発を進めてきた。 実空間動的構造因子G(r,E)は、INS実験で得られる動的構造因子S(Q,E)をフーリエ変換することによって導出が可能であるが、正しいG(r,E)を得るためにはできるだけ広い運動量-エネルギー(Q-E)空間をカバーしたS(Q,E)を取得することが必要である。しかしながら、無限に広いQ-E空間をカバーするS(Q,E)の取得は原理的に不可能であり、より高い入射エネルギーを用いた高分解能・高強度のINS実験が要求されるが、この実験はJ-PARCの大強度中性子ビームを以ってしても困難である。このような問題意識をもとに、INS実験で得られるS(Q,E)二次元データマップを一枚の画像と見立て、最大エントロピー法のアルゴリズムを利用して、十分に広いQ-E空間をカバーする仮想S(Q,E)から実空間ダイナミクス解析を実現させることを本研究課題で提案している。 2021年度は、2020年度までに整備した機器を用いた中性子非弾性散乱実験を実施し、研究目的の測定試料として挙げていた石英ガラスと圧縮石英ガラスの動的構造因子S(Q,E)データを取得した。このデータを元に、実空間動的構造因子G(r,E)への変換を行い、解析の妥当性を評価してきた。この評価により、G(r,E)への変換においては、バックグラウンドを正確に差し引き、真に試料由来のS(Q,E)データを取得することの重要性が顕著となった。この知見を受けて、さらなるバックグラウンド低減に向けた努力を加速している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに高速化に成功したT0チョッパーは大きなトラブルもなく順調に運転ができており、高分解能ビームコリメータもJ-PARC物資・生命科学実験施設の4次元空間中性子探査装置「四季」に実装した。2021年度には、これらのデバイスを利用した中性子非弾性散乱実験を石英ガラスと圧縮石英ガラスについて実施した。予備的解析から、中性子非弾性散乱実験で得られる動的構造因子S(Q,E)から実空間動的構造因子に変換する際に、正確にバックグラウンドを差し引くことの重要性が顕著となった。このため、低バックグラウンド化を目指した中性子遮蔽ゴムや金属ガラスシートの調達も進め、さらなるバックグランド低減を目指して研究活動を進めている。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、石英ガラスと圧縮石英ガラスに対して、2020年度までに整備した各種デバイスを利用した非弾性中性子散乱の予備実験を行った。現在、解析を進めているところであるが、今後は、解析プログラムの高度化やバックグラウンドの低減を継続して行うと共に、本研究の最終目標である非晶質材料の実空間ダイナミクス解析をさらに推し進め、論文にまとめ公表する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響は2021年度にも収束せず、出張を伴う国内外での研究会や学会が開催されることなく、出張旅費に想定外の余剰が生じることとなった。 また、昨年度に導入を予定していたワークステーションについても半導体不足の影響を受け、年度内の入手が不可能となったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、データ解析の高速化に資するワークステーション購入に要する費用として使用する。一方、半導体不足に係る今後の社会情勢も鑑みて、バックグラウンド対策に必要な中性子遮蔽材の購入も次年度使用額の対象の一つとして検討しておく。
|
Research Products
(5 results)
-
-
-
[Presentation] High-Pressure Neutron Experiments in J-PARC2021
Author(s)
T. Hattori, A. Sano-Furukawa, S. Machida, J. Abe, K. Funakoshi, H. Arima, M. Nakamura, K. Iida, T. Yamada, K. Ohishi, S. Ohira-Kawamura, T. Kikuchi
Organizer
10th Asian Conference on High Pressure Research
Int'l Joint Research / Invited
-
-