2020 Fiscal Year Research-status Report
高分子の照射損傷を利用した新しい中性子線量計の開発
Project/Area Number |
19K12652
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 知洋 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 専任研究員 (40282496)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ(CNT) / ホウ素中性子捕捉療法(BNCT) / 炭化ホウ素 / 中性子 / 線量計 / シリコーン / 電気伝導率 / イオン照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高分子の電気抵抗がイオン照射による損傷に敏感であることを利用して、炭化ホウ素(B4C)を分散させた高分子(シリコーン)の電気抵抗変化を利用した新しい中性子線量計を提案する。この方法による中性子線量計はホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)における利用が考えられ、以下の利点がある。 (1)検出は高分子材料の抵抗変化で行うため、小型化に限界がない (2)BNCTプロセスそのものであるαおよびLi粒子による照射損傷を利用する (3)オンライン計測(リアルタイム計測)/オフライン計測(長期残置で積算)いずれも可能 (4)簡便かつ安価である。 研究項目としては、(1)中性子照射による抵抗変化測定とCNT混練濃度の最適化、(2)CNTの選別と混練方法の最適化、電子顕微鏡によるCNT分散状態の観察、(3)高分子へのイオンビーム照射による欠陥導入と抵抗率変化測定、(4)中性子源RANSの正確なジオメトリを反映したモデルを用いたモンテカルロ法による線量評価、(5)ガンマ線が抵抗率に与える影響の検証としている。当該年度は最も重要な(1)を中心に測定を行った。本研究で中性子照射に使用する加速器中性子源RANSは近年実験希望が増加しており、本研究の占有マシンタイムを取ることは非常に難しくなってきている。そのため、中性子発生ターゲット側方に開いているターゲット交換用横穴に試料を設置し、他グループの実験時に測定を行うこととした。 試料にはリード線を接続し、デジタルマルチメータを用いて抵抗値の変化を継続的に記録した。この方法により延べ数百時間における挙動を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画では、シリコーンを除く高分子へイオン照射を行い、本研究で開発する線量計に適した高分子の探索を行う予定であったが、合成/CNTの分散・混錬/成形というプロセスを研究期間中に行うことは難しいと考え、シリコーンに特化することとした。その結果、中性子照射を行う時間は大幅に増えており、照射中の挙動データの蓄積が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、引き続き中性子照射による抵抗率のin-situ測定を重点的に行う予定である。また、抵抗率の変化が照射効果のみならず、温度変化にも敏感になってしまっているため、試料固定方法を再検討する。具体的には試料体積の変化に端子接触が影響されにくい構造・材質を検討し製作を行う。令和3年度の中性子照射マシンタイムについては本研究の装置占有時間を増やす必要があるが、十分に確保できない場合も考慮してRANS-II(2号機)の併用を開始する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため発表機会がオンラインのみとなり、国外のみならず国内旅費の使用ができなかったのが主たる原因である。今年度はワクチンの普及により出張可能となれば積極的に成果発表の機会を求める予定である。一方、前年度同様に状況が改善されない場合には、中性子照射回数を増加させるための試料ホルダー製作に充当するほか、発表論文のオープンアクセス化費用に充当する予定である。
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