2019 Fiscal Year Research-status Report
家具の模倣品問題におけるデザイン的見地からの比較検証研究
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19K12657
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
多田羅 景太 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (00504250)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジェネリック製品 / リプロダクト / 模倣品家具 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2019年度から2021年度の3年間にわたって実施する計画である。初年度の2019年においては、主にインターネットを活用して模倣品販売業者が取り扱うモデルを洗い出し、データベースを作成した。 国内で模倣品家具を販売する専門業者として、株式会社川口タンス店によって運営されるE-comfortが広く知られているが、同業者にて取り扱いが無いモデルもインターネット通販などを通じて流通していることがデータベースの作成から明らかになった。今後も新たな模倣品モデルが追加されるケースが考えられるので、動向を定期的に注視しながらリストの更新を続けたい。 次に、制作したデータベースを基に数脚の模倣品および正規品を購入した。具体的にはLC1スリングチェア(ル・コルビュジエ)の模倣品、No.45(フィン・ユール)の模倣品、セブンチェア(アルネ・ヤコブセン)の正規品、Yチェア(ハンスJ.ウェグナー)の正規品である。これら以外にも研究資料として数脚の模倣品および正規品を所有しているので、それを基にまずは目視での比較を行った。結果としてモデルにより模倣品と正規品の差異にばらつきがあることが明らかになった。例えばNo.45は複雑な木材加工を伴うモデルであるが、正規品の繊細な造形と比較して模倣品は明らかに正規品のディテールを簡略化した外観となっており、両者を並べるとその違いは一目瞭然である。一方で金属パイプと革で構成されるLC1スリングチェアは、模倣品と正規品の外観的差異が少ない。複雑な木材加工を伴う木製椅子の方が、低コストでの複製が困難であるいう仮説を立てることができる。今後の調査でも、素材やその製造方法に着目ながら両者の比較を続けていく。 なお予定していた3Dスキャナーによる立体データの作成は、機材の都合により2019年度はあまり実施できなかった。2020年度に作業を再開しデータを収集していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の影響で模倣品家具の主な生産地である中国での生産が滞っており、予定していた模倣品モデルを入手することができなかった。調査対象を国内在庫モデルに切り替えて進めていく方法が考えられるが、対となる正規品の入手や借用が困難な場合は調査対象として加えることは難しい。また、2020年度3月に予定していたデンマークでの現地調査についてもCOVID-19の影響で渡航が延期となり、実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象モデルの未入手により研究に遅れが生じているが、制作したリストを基に調査対象モデルを再考したい。また、初年度にあまり実施できなかった3Dスキャナーによる立体データの作成と解析を進めていく。 一方で海外での調査については今のところ見通しが立たないが、国内での県境を跨いでの移動が可能になれば、北海道の織田憲嗣氏のコレクションも含めた調査が可能となるため、調査対象モデルに幅を持たせることが可能となる。 今後も社会の動向を注視し、現在の環境で実施できる可能な範囲での調査、研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で2020年度3月に予定していたデンマークでの現地調査が実施できなかったため生じた余剰額である。今後の状況にもよるが、渡航可能となった時点で旅費として余剰額も含めて使用する予定である。
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