2020 Fiscal Year Research-status Report
心身機能の活性化「トレーニングアート」の開発と実践研究
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19K12667
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
吉岡 聖美 明星大学, デザイン学部, 教授 (80620682)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インタラクション / リハビリテーション / 身体機能 / 認知機能 / 嚥下機能 / 思考トレーニング / 口腔顔面運動 / スマイルアイコン |
Outline of Annual Research Achievements |
身体機能および認知機能に働きかける「トレーニングアート」プログラムに取り入れる身体動作や思考トレーニングに関する先行研究および現状把握のための調査を行なった。その結果,我が国における死因を年齢階級別にみると高齢になるほど肺炎の割合が大きくなり,65歳以上で第4位,85歳以上で第3位となることを確認した。また,肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者,その7割以上が誤嚥性肺炎である現状を踏まえて,「トレーニングアート」における身体機能のリハビリテーション要素として嚥下機能の維持向上のための訓練を取り入れることとする。認知機能の維持向上を目的とする取り組みの実践例では,地域包括支援センターの介護予防普及啓発事業において,「グー・チョキ・パー」を口腔顔面運動に変換して後出しで反応する「口腔顔面運動による後出しじゃんけん」の課題遂行は,刺激情報の変換・再変換処理を要しながら種々の葛藤抑制処理機能を必要とし加齢の影響を受けやすいと推察されていることを確認した。加えて,嚥下機能の維持向上を目的とした嚥下体操において,口・舌・頬の運動によって唾液分泌量が有意に増加して摂食・嚥下機能に効果を与えることが示されており,その中には「口腔顔面運動による後出しじゃんけん」に含まれる「グー・チョキ・パー」の表情に置き換えることができる顔表情が含まれていることを新たに見出した。 これらの調査研究に基づき,「トレーニングアート」のプログラムでは,身体機能および認知機能のリハビリテーション要素として,嚥下機能と思考のトレーニングを実行するための口腔顔面運動による後出し顔じゃんけんを取り入れる。また,研究代表者の先行研究に基づいて,心理的効果が期待できる「スマイルアイコン」および,継続的取り組みのモチベーション維持が期待できる「インタラクティブな画像の変化」をデザイン要素として取り入れたプログラム設計を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
身体動作と思考トレーニングの要素を取り入れることによって,心身機能を活性化するプログラム「トレーニングアート」を開発する。「トレーニングアート」のプログラムでは,2019年度の研究結果に基づき,インタラクティブに画像が変化するデザイン要素によって身体動作を誘導する。また,2020年度の研究結果に基づいて,「グー・チョキ・パー」に置き換えることができる表情を用いた後出し顔じゃんけんを基本構成として,嚥下機能と認知機能に働きかけるプログラム設計を行うこととした。現在までに「トレーニングアート」の基本構成の概要が定まり,また,プログラムの効果を評価するための基礎実験で用いる顔イラスト画像の制作を進めていることから,「トレーニングアート」を開発するための研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,嚥下機能および認知機能に働きかける「トレーニングアート」のプログラムを開発するため,2020年度に制作した顔じゃんけんおよびスマイルアイコンに基づく顔イラストの画像を用いて,プログラムの心理的効果および身体機能に関わる効果を評価するための基礎実験を行う。また,「トレーニングアート」における身体動作の誘導,および,モチベーションや気分の改善に関係するアート・デザイン要素(色,形,素材,効果音など)を調査するための研究を実施する。これらの研究結果を基に,身体動作と思考トレーニングの要素を取り入れた「トレーニングアートアート」のプログラムを設計してプロトタイプを制作する。その後,プロトタイプを用いた予備実験を実施してプログラムの実行可能性を評価し,実践評価のためのプログラム開発に反映する。 また, COVID-19感染拡大防止策により2021年度に実施できなかった,要介護に陥るリスクの高い高齢者を対象にした「二次予防事業」,および,活動的な状態にある高齢者が生きがいをもって地域で自立した生活を送ることを支援する「一次予防事業」における支援プログラムについて,リハビリテーションに関わる取り組みの現状調査を行なって,心身機能を活性化する「トレーニングアート」の概念を確立する。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大防止策のため,2020年度に予定していた現状調査(要介護に陥るリスクの高い高齢者を対象にした「二次予防事業」,および,活動的な状態にある高齢者が生きがいをもって地域で自立した生活を送ることを支援する「一次予防事業」における支援プログラムの関わる取り組み)を実施することができなかったため,現状調査のための旅費および人件費の支出がなくなったことから次年度使用額が生じた。2021年度に実施する現状調査において次年度使用額を支出する。
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