2023 Fiscal Year Annual Research Report
エルサレム会議のデザイン史研究―現代社会の課題に対応力のあるデザインを求めて
Project/Area Number |
19K12668
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
近藤 存志 東洋大学, 福祉社会デザイン学部, 教授 (00323288)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モダン・デザイン / 地域コミュニティ / 生活共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
エルサレム会議での議論は、同会議発足以前の1968年にエルサレム市がとりまとめていた基本計画案を基にしていた。この基本計画では、エルサレム市が歴史遺産の保存を徹底するあまり、「墓碑の博物館」(a museum of gravestones)と化すことを回避する方針が明確に打ち出された一方で、市民生活については「既存のコミュニティの枠組み」が維持されることが重視された。 1969年7月に開かれた第1回エルサレム会議が発表した初回声明にも、「エルサレム市を『博物館』『演劇の舞台』のような状態にしてはならない」、「それは『生きた(成長する)都市』であり続けなければならない」、「エルサレム市が直面している『現実』『抱えている現実の問題』について、調査・検討がなされなければならない」といったことが強調された。同様の姿勢は、第2回(1973年6月)、第3回(1975年12月)のエルサレム会議でも明確にされた。そして第3回エルサレム会議後採択された決議には、「地域社会の結びつきを維持」し、「地域社会における生活の多様性を促進し、地域の遊び場、小さな公園、小さな緑地、学校、図書館、その他のコミュニティ施設など、物理的な意味における開発発展を実現」すること、そして「地域コミュニティにおける自治委員会の役割」を強化することの重要性が謳われることになった。 エルサレム会議による近代化計画が、モダニズムの建築と都市計画に強く刺激されながらも、既存の小さなコミュニティとその自治委員会の役割を強調することになった背景には、キブツやディアスポラといった生活共同体のイメージが、あるいはユダヤ社会におけるコミュニティと自治の伝統が影響を及ぼしたのではないか。2023年度はこうした点について、イスラエル国立図書館およびエルサレム市庁舎歴史文書資料室での資料収集を行い検討した。
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Research Products
(2 results)