2020 Fiscal Year Research-status Report
空間曲線を折り目に持つ折紙の形状設計および変形シミュレーション
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19K12677
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三谷 純 筑波大学, システム情報系, 教授 (40392138)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 折紙 / 曲線折り / 形状モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
厚さを無視できる程度に薄く、伸縮しない素材を曲線で折り曲げて得られる形状の幾何的な性質の解明と、設計手法および、折り操作による変形過程のシミュレーションの実現を目指して研究およびシステムの研究開発を進めてきた。これらに対するアプローチは複数考えられ、それぞれについて試行と評価を行った。ひとつには、形状を平面状に開いた展開図から、折った後の形状を推定するものがある。折り線での折りの角度を指定し、変形過程をシミュレートすることで、曲線での折り目をもつ立体形状を得ることができる。しかし、計算機内でのシミュレーションでは、形状の離散化という前処理が必要であり、この処理をどのように実現するかが課題であった。これまでに、得られる曲線を構成する可展面の直線エレメントを推測し、それに基づいて離散化を行う方法、および、一般的な有限要素法で用いられる三角形メッシュ分割の手法の応用に基づく方法などを試行してきた。一般に、折り目を表現する曲線が複数存在する場合、それらを折った形状が存在するかどうかを判定することは困難であるが、素材の微小な伸縮を許容することで、実際には作ることができる場合が多い。このような現象を表現可能な、弾性体モデルでのシミュレーションを行うフレームワークの整備を行った。また、形状を決定する各種パラメータを対話的操作で入力する方法、構築された形状に含まれる直線エレメントの交差部分を除去するための最適化手法、ピローボックスと呼ばれるボックスデザインにおける曲線とボリュームの関係の研究など、研究課題に関係する内容についても取り組んできた。今後は、これらの取り組みをより前進させるとともに、得られた結果の評価などをまとめ、論文として発表できるように進めていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
折り目となる空間曲線を定義する曲率および捩率と、それに対応する展開図上での折り線を定義する曲率、および折りの角度をパラメータとして、曲線での折り目を持つ可展面の形状を決定できるため、これらを用いた設計システムの研究開発を行ってきた。しかし、それぞれの値は単一の数値ではなく、曲線に沿って連続的に変化するものであるから、それらを適切に制御して意図した形を得ることは容易ではないという課題があった。そこで、それぞれの値の変化をスプライン曲線によって定義し、ユーザがスプライン曲線のコントロールポイントを対話的に操作することで形状操作を行うものとし、それを実現するシステムの研究開発を行った。しかしながら、それでもまだ操作には熟練を要するという課題がある。現在、より直感的な操作を実現するためのGUIシステムの開発を進めている。また、ユーザの操作で得られたそれぞれの値が、実際に形状を生成するうえで不適切であった場合には、自動で補正する機能を追加するための研究開発を行った。例えば、可展面を定義する直線エレメントの方向ベクトルが折り目曲線上の各点で求まるが、これらは局所的な幾何制約から導き出したものであるため、折り目の近傍から離れた場所で、直線エレメントの交差が発生する場合がある。このような問題を回避するために、直線エレメントの交差を検出し、それらが折り目の近傍に生じないように、各パラメータを自動調整する方法を検討している。また、このような形状設計システムと並行して、折り目となる曲線の入力から、折り形状を推定するためのシミュレーションを行うことの研究も進めた。これは、展開図内における、折り線に囲まれた領域を適切にメッシュ分割することで、曲面部分を離散化したモデルとして再構築するものである。既存のバネマス・ダンパモデルを用いた物理シミュレータを用いることで、適切な形状が得られることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
空間曲線の折り目を持つ可展面の形状設計に必要となる、幾何学的な制約条件を満たすための設計ツールの基本的な開発を行ってきたが、これらに、より直感的な操作を実現するためのGUIシステムの研究開発を進めていく。とくに、各種のパラメータの入力を、画面上のパラメトリック曲線の操作に置き換えること、および、折り目となる空間曲線を直接GUIでコントロールすることなどを対象とした研究を進める。さらに、デプスセンサーなどで得られる奥行情報を用いた、可展面形状の再構築など、異なるアプローチでの設計アイデアもあるため、それらを実装し、評価することを進めたい。 また、設計時には、素材の厚さや折り目付近での微小な変形などの物性を考慮していないため、設計で得られた形状と、実際に作られる形との差異を評価する必要性も感じている。このような、設計と制作時のギャップを考慮することで、制作したい形状に必要な幾何モデルの生成が可能になると考えられる。それらを、設計ツールに組み込むことも検討を進める。本研究課題への取り組みは、2021年度が最終年度となるため、得られた成果を対外的に発表するとともに、論文にまとめ投稿することも進める必要がある。またさらに、本研究課題を進めるなかで、ピローボックスの折り目の曲線とボリュームの関係に関する研究への発展もあり、当該分野の発展と裾野の拡大の可能性も見えてきたため、将来へとつながる新しいシードの探究も並行して進めたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、国内外の会議参加のための旅費が、すべて新型コロナ感染症の拡大予防のために中止となり、本年度に執行することが無くなったため、次年度使用額が発生した。次年度に、出張等が可能となれば、旅費として使用する予定である。
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