2021 Fiscal Year Annual Research Report
上腹部柔軟度を指標とする予防医学用計測・解析システムのデザイン開発
Project/Area Number |
19K12684
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
加藤 大香士 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 准教授 (90362285)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 予防医学 / ヘルスケア / 自律神経 / 人体動力学 / 生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
上腹部の柔軟度と個人の健康状態、体調との関係を定量的に調べることにより、新しい健康指標としての上腹部柔軟性を提案することが本研究の目標であった。上腹部の柔軟な状態があれば、呼吸と循環が整うことが臨床的には明らかになっている。 上腹部のかたさは、横隔膜運動(腹式呼吸の度合い)に多大な影響を与えることが考えられる。そのため、段階的な生体運動の検証を行なっていくこととした。具体的には、外部からの自律神経系操作が、上腹部の上下運動(間接的な腹式呼吸)の度合い、呼吸頻度、脈拍にどのような影響を与えるかについて調査した。7名の被験者に対し、仰臥位において3分間の開眼安静状態の前後、3分間の眼心臓反射(アシュネル反射)操作の前後、そして、参考として3分間の鍼施術(頸部置鍼)の前後における上腹部柔軟度の計測結果をまとめた。被験者は測定日の前日の夕食を21時までにとり、当日の朝食を抜いた状態で測定に臨んだ。 実験結果から、副交感神経の亢進を誘発する眼心臓反射が、上腹部の運動状態と呼吸に影響を与えることを明らかにした。 上腹部の運動は、人体力学的に体腔内での横隔膜の運動と密接に関係し、その上下動は、血液循環、特に静脈還流を促す呼吸器ポンプ機能に必要である。また、横隔膜には自律神経叢があるため、横隔膜筋の運動が自律神経からの影響を受ける。すなわち、横隔膜運動の旺盛さが代謝を促進させ、ホメオスタシスに多大に貢献する。さらに、横隔膜が運動しやすい状況は、上腹部が柔軟であることによってもたらされる。 現状では、横隔膜の運動状態を直接モニタリングすることは難しいが、間接的に腹壁の運動を解析することで、横隔膜の運動を推定できる可能性があることが本研究によって新たに示された。すなわち、上腹部の柔軟性がヘルスケアの重要な指標であることの実証に向けたエビデンスとしての横隔膜の運動推定方法が、本研究によって提案された。
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