2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K12694
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
青木 幹太 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (70159276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西薗 秀嗣 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (10125338)
牛見 宣博 九州産業大学, 理工学部, 教授 (70284536)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 介護デバイスの開発 / 中腰姿勢の抑制 / 腰部負担の緩和 / 要介護者の自立意欲 / 介護負担の生理特性 / 設計仕様の明確化 / フィールドテスト / 社会実装 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者施設等で移乗や移動などの長時間介護によって発生する腰痛を抑制し、合わせて要介護者の残存機能を生かして介護への依存心を和らげ拘縮予防効果のある介護デバイスの有効性を検証するために、①介護デバイス(実験機)、②市販の介助ベルト、③補助具等を使わない介護の3条件で、座位から起立、起立から座位の介護で出現する筋活動を上肢(上腕二頭筋)、体幹(脊柱起立筋)、下肢(大腿四頭筋)の表面筋電図測定、介助動作の三次元動作解析、介助者の主観評価を実施した。 表面筋電図については、被験者の随意最大筋力に対する筋出力の割合(%MVC)を算出し、上肢(腕橈骨筋)と体幹(背筋群)で、介護デバイスが、補助具等を使わない介護と比較して筋活動量が有意に小さいという結果を得た。介助動作の三次元動作解析では、補助具を使わない介護の体幹前傾角度の値が大きく、介護デバイスでは体幹傾斜角度が有意に小さいことがわかった。また脊柱屈曲角変位に注目すると、補助具等を使わないで介護で8.8±3.6°(平均値±標準偏差)、介護デバイスで5.2±2.3°であり、介護デバイスが介助作業中でも腰部に負担の少ない姿勢をとっていることが明らかになった。介助者の介助動作後の主観評価では、被験者の負担度を6段階で評価した結果、介護デバイスが補助具等を使わない介護に比べて有意に小さく、自由記述の回答でも介護デバイスでは「脊柱の負担をほとんど感じない」、「要介護者が身体を引きつけるので、重心移動が楽に感じた」などの記述があった。 以上の結果より、本年度の研究では、介護デバイスが介助者の腰部負担の軽減に有効であることを検証することができた。次年度に向けては、要介護者が握りやすいグリップの形状や取り付け位置、角度等を明らかにすることで、介護デバイスの実用化に向けた研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は高齢社会を迎えた我が国において、介護負担を軽減化するとともに、高齢者等が介護に依存することなく、自立意欲を持って生活することを支援する介護デバイスの研究・開発を目指している。 研究開始当初より、学内の理工学部、人間科学部の専門領域の研究者の協力を得ていること、また大学近郊の医療法人原三信病院香椎原病院のリハビリテーション科のスタッフ(理学療法士、作業療法士)の協力を得ており、医療現場の意見や要望を確認しながら介護デバイスを改良するとともに、検証実験等においても現場で行われている介助方法などの助言を得るなど、効率的、効果的な研究・開発を行うことができている。 また学内には介護デバイスの評価実験を行うための筋電図測定器や三次元動作解析装置などの機材が整備されており、研究の進捗に合わせて随時、検証実験等が行えること、介護デバイス(実験機)の製作においても、工作機械を設置した工房のほか、三次元プリンターやレーザー加工機などのデジタル造形機がいつでも利用できることなど研究環境に恵まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度では、介護デバイス実用化のための基礎データを収集することができた。今後の研究では、介護デバイスの設計仕様の明確化とそれに基づくプロトタイプモデルの試作を実施する。 初年度の研究成果より、介護デバイスの開発要件は、①高齢者施設等での利用を促進するために、プロトタイプ製作段階より、価格を抑えた構造、機構を検討する、②介護従事者が装着の手間が少なく、初心者でも使いやすい仕様とする、③要介護者が残存機能を生かして介助を受ける際に、自身の体幹を支えるなど、介護依存を抑制する機能(把持グリップなど)を持たせるなどが考えられる。 初年度に実験用として製作した介護デバイスでは、リュックのように肩がけとし、介助者と介護デバイスが接する背面は、介助者の脊柱に沿ってある程度硬度のある材料を使い、介助作業中の腰背部の屈曲や湾曲を抑制することで、介護負担の軽減化が図られることがわかっている。本年度は介助の際に要介護者が自らの体幹を支えるグリップの取り付け位置や形状の仕様を検証実験より明らかにする必要がある。 このような研究を踏まえて、製作したプロトタイプモデルを研究協力をお願いしている医療法人原三信病院香椎原病院のリハビリテーション科に持ち込み、介護従事者に入浴介助や排泄介助、起立や歩行訓練などで実際に装着して使ってもらい、腰背部の負担や作業効率などの面から実用性の評価を行い、現場使用の問題点を改善して、最終試作を行う。
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Causes of Carryover |
初年度は計上した旅費が、年度末のコロナ問題から予定していた出張ができなかったため、次年度使用額が生じた。2020年度は、介護デバイスのプロトタイプ製作のための材料購入等の消耗品費、検証実験やプロトタイプ製作の補助員への謝金など、人件費・謝金に活用する。
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Research Products
(3 results)