2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K12728
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
池田 尊司 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 助教 (80552687)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 脳磁図 / 自閉スペクトラム症 / 視覚野 / 色知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(ASD: autism spectrum disorder)児は対人コミュニケーションに困難を抱えていることが知られているが、その根底には低次の感覚・知覚レベルでの過敏や鈍麻が生じていることが指摘されつつある。本研究では、5から7歳のASD児の視覚刺激に対する視覚野の反応特性を、定型発達(TD: typically developed)児との比較において定量的に評価することが目的である。脳機能計測には、時間・空間解像度に優れ、幼児に対して計測ストレスの少ない脳磁図(MEG: magnetoencephalography)を用いた。 MEGデータの取得時に用いた視覚刺激は、一般的に用いられている輝度コントラストからなるパターンリバーサル課題を幼児向けに改変し、さらに赤と緑の色コントラスト条件を追加したものであった。幼児MEGデータの取得に際し、1条件あたり120試行分のデータを取得し、2条件全てを10分以内で計測できるようにプロトコルを策定した。この刺激を観察しているときの脳活動をMEGで計測し、計測終了後にはアーチファクトやノイズを取り除くための前処理を行った。 同施設内に設置されたMRIで取得したT1強調構造画像と合わせて分析を行うことで、鳥距溝から後頭極までの初期視覚野に信号源が推定できることを確認した。 また、実験参加児のスクリーニングと、脳活動と視空間性認知機能との相関を検証するためのデータを取得した。色覚検査には石原色覚検査表IIコンサイス版14表を、知能検査にはK-ABC(Kaufman assessment battery for children)を用いた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASD児およびTD児のMEGデータ・色覚検査および知能検査の結果が揃い、順調に推移している。実験参加児の頭の動きは磁場を乱してMEGデータのアーチファクトを生じさせ、瞬目は視覚刺激が正しく入力されていないことを示すため、これらが生じた試行は解析から除外した。動きや瞬目のタイミングは、MEG計測と同時に録画した動画から手動で確認した。また、独立成分分析によって心拍によるアーチファクトに該当する波形を推定し、これを差分によって除外した。1試行に相当する区間は、刺激が呈示される100ms前から提示後500msまでとした。MEGで取得した脳活動データの信号源推定に用いるMRI画像の前処理が完了し、実験参加児の脳形態データが揃った。 新型コロナウィルス感染症の影響で出席予定であった国際学会が中止となり、報告の機会が得られなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は研究施設を使用できない期間が長く、学会での報告も滞ったが、論文報告に最低限必要なデータ収集を完了したため、データの前処理および解析の継続と、国際原著論文による成果報告に注力する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で新規計測の一部や出張が中止となり、計測のための費用、および旅費に未使用額が発生した。そのため、次年度予算として取り置いて成果発表のために備えることとした。
|