2021 Fiscal Year Research-status Report
Hypothalamic neural circuit controls parental behavior in female and male mice.
Project/Area Number |
19K12738
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
折笠 千登世 日本医科大学, 医学部, 准教授 (20270671)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 養育行動 / オプトジェネティクス / MCH / オキシトシン / 社会行動 / DREADD / Creリコンビナーゼ / 虐待 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、養育行動発現に関わるメラニン凝集ホルモン(MCH)とオキシトシンニューロンそれぞれの関係性と分子基盤を明らかにすることを目的とする。前年度に、オプトジェネティクスによる行動発現を誘起するための至適な周波が明らかになり、ニューロン特異的なマウス養育行動の解析を行った。また、MCHニューロンに導入されたChR2の神経線維の走行の解析により室傍核のオキシトシンニューロンに投射が認められた。 視床下部外側野のMCHニューロンと室傍核のオキシトシンニューロンそれぞれにChR2を導入しオプトジェネティクスにより神経活動を活性化させることで、GFP導入の対照群に比して養育行動が引き起こされることが明らかとなった。MCHニューロンおよびオキシトシンニューロン特異的な光刺激による検討の結果、養育行動の抱え込み行動が誘起されることがあきらかとなった。雌においては、抱え込み行動が惹起される時に血漿中のオキシトシンの有意な上昇が認められた。雄では上昇傾向にあったが有意性は確認されなかった。 MCHニューロンの神経伝達物質はγーアミノ酪酸(GABA)であることを免疫組織化学によって明らかにすることができた。GABAのアゴニストであるムシモルを室傍核近傍の脳実質内に投与し室傍核にあるオキシトシンニューロンの発現を最初期遺伝子であるcFOSによって検討した。オキシトシンニューロンのcFos発現はムシモル投与によって有意に増加し、MCHニューロンの投射系においてGABAによる興奮を引き起こしている可能性が示唆された。通常のGABAによる制御は抑制性であるが、養育行動を引き起こす条件下では、GABAによるオキシトシンニューロンの制御性は興奮である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、養育行動発現に関わるオキシトシン-メラニン凝集ホルモン(MCH)ニューロンそれぞれの関係性と分子基盤を明らかにする事にある。今年度はオキシトシン-メラニン凝集ホルモン(MCH)ニューロンの投射系においてGABAによるオキシトシンニューロンの調節が明らかになった。MCHニューロンの神経伝達物質はグルタミン酸であるとの報告がなされていた。養育行動に関連するMCHニューロン神経伝達シグナルとしてGABAであることが判明したことは、抗不安作用が養育行動を引き起こす上で重要であるという事が考えられた。tet-offシステムによるMCHノックアウト動物を用いた実験においては無視行動や攻撃行動に転じることが過年度の研究により明らかになっている。Creリコンビナーゼ依存的にジフテリアトキシン(DTA)を作用させることによって、MCHニューロンの脱落変性が起こり、雌雄において無視の行動が現れた。tet-offシステムによるMCHKO動物では、胎生期からMCHニューロンがノックアウトされておりMCHニューロンからオキシトシン投射系の構築が破綻していることが考えられた。DTAによるMCHニューロンの脱落変性は最大で70%であり、攻撃行動が雄においても引き起こされないということが発育過程でのMCHニューロンからオキシトシンニューロン神経連絡の構築が重要であることが考えられた。すなわち、MCHニューロンからオキシトシンニューロン神経連絡の構築が母性行動の促進に重要な役割を果たしていることが示唆され、発達期にそのような回路の構築に異常をきたすことによって攻撃行動という種の保存にとっての危機にさらされる。これまでの養育行動を引き起こすセンターが視索前野にあるという事に加えて、MCHニューロンからオキシトシンニューロン神経連絡が攻撃行動を抑制する回路を形成していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、、tet-offシステムによるMCHニューロンノックアウトが雄においては喰殺行動を引き起こすことが、また、雌では無視行動が引き起こされるような養育行動に対するネガティブな行動変化が現れることが判明した。雌での無視行動、雄での喰殺行動は、ヒトのネグレクトや虐待に直結する問題として新たな視点がでてきた。MCHニューロンは、神経伝達物質としてGABAをもつ。一般的にGABAは抑制性の神経伝達物質として知られる。しかし、これまで報告されたGABA作用に、ストレス条件下での興奮性の作用を持つことが知られている。本実験では、長期の社会的隔離による養育行動を促進する系(Orikasa et al., 2015)を用いている。長期隔離によるストレスは既に報告があり、GABA抑制から促進への 換が引き起こされている可能性を考えた。そこでオキシトシン-MCH Creリコンビナーゼバイジェニックマウスを用いて、2種類のGFP, mCherryをコンストラクトに含むAAVを用いニューロンを標識し、パッチクランプを用いた解析によって、これらニューロンの関連性を明らかにする。 一方でtet-offシステムによるMCHニューロンノックアウトが雄においては顕著な喰殺行動を示すことが判明していることにより、MCHのアゴニストを直接脳室内に投与して、行動の抑制につながるかの検討を行う。第一段階としてMCHKOの雄のpupに対する攻撃行動を確認し、しかる後にMCHアゴニストをオスモティクポンプにて側脳室から4週間暴露して、pupに対する喰殺行動が抑制されるかの検討を行う。
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Causes of Carryover |
最終年度にむけておおむね順調に計画は進み次年度に向けた研究を遂行する段階であったが、施設の移転等で実験することができないという事があり、このような使用の発生が生じた。発展的計画に記したように、ダブルトランスジェニックを使った実験と、MCHの補充療法によるホルモンの効果を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)