2021 Fiscal Year Research-status Report
視点取得を支える身体知覚メカニズムについての比較認知科学的研究
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19K12739
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
松野 響 法政大学, 経済学部, 准教授 (90588047)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 比較認知科学 / 視点取得 / フサオマキザル |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画は、ヒトおよびヒト以外の霊長類を対象として視点取得を支える身体知覚特性の比較研究をおこない、社会的認知の基礎となる身体的な他者認識の進化的な普遍性と種独自性を明らかにすることを目的としている。 本年度は、フサオマキザルが異なる視点から観察された同一のイベントを、同一のものとして知覚認識できるのか否かを検討する実験をおこなった。ヒトは、視野内に他者が存在する際、その他者の視野範囲を自動的に参照し、その他者と知覚対象の関係性を基礎として視知覚情報の処理をおこなうことが知られている。このような知覚認識は、空間的に異なる視点から同一のイベントを表象する知覚認知情報処理が関わると言われている。このような過程について検討するため、本年度は動画像を用いた視知覚弁別実験をおこなった。これまでの本計画で実施した実験ではいずれも静止した視覚情報の知覚認識を問う実験課題を用いていたが、動画像を用いることでより実際の社会的場面に近い状況においてその知覚認識を問うことが可能となる。 実験では見本合わせ課題を用いて、人モデルが物体に対してある動作をする動画像を観察した後、選択肢の中から最初に見たものと同じ動画像を選択する学習訓練をおこなった。その上で、同じシーンを異なる視点から撮像した動画像に対してそのような選択行動が般化するか否かを調べた。実験の結果、フサオマキザルでは、そもそも動画像の視覚弁別がこれまでの静止画像を用いた場合に比べて困難でありその学習訓練により多くの学習セッションが必要となること、また、フサオマキザルは特に視点が大きく変わる動画像において、限定的にしか般化を示さないことが明らかとなった。このような結果は、ヒトと比べてフサオマキザルでは、空間的に異なる視点から観察されたイベントを同一のものとして表象するための知覚認知情報処理に制約があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フサオマキザルを対象として空間的に異なる視点条件での他者認識に関する視知覚認知実験をおこない、興味深い種差を含む実験結果を得た。また本計画に関するこれまでの研究の成果をまとめ、書籍の一章として公表した。一方、動物をもちいた実験において学習訓練が想定以上に長くかかり、今年度の計画において予定していた実験をすべて完了することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画開始時にたてた研究計画に基づき、最終年度の計画を進める。これまでに構築した動物実験およびヒト心理実験のための実験環境を引き続き利用して、継続して知覚認知実験をおこなう。新たな課題での動物実験を実施するための研究機関への倫理申請は既に実施済みであり、倫理審査にて研究が承認され次第、実験を開始する。また、ここまでの成果を学術誌への投稿論文として成果発表する。
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Causes of Carryover |
本年度おこなうことができなかったフサオマキザルおよびヒトを対象とした最終の一実験を実施するための予算が未使用となった。これを実施するため、その分の経費を次年度使用する。また、草稿の執筆が遅れ現在準備中の海外学術誌への研究成果の投稿に関する経費についても、次年度おこなう実験成果の公表にかかる経費とともに、これを使用する。
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Research Products
(2 results)