2020 Fiscal Year Research-status Report
「表現のうねり」を生みだす熟練ドラム奏者の全身協応―力学系理論による解明
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19K12740
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古山 宣洋 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20333544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 哲都 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (80723668)
三嶋 博之 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90288051)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 身体協応 / 熟達 / 力学系理論 / ドラム |
Outline of Annual Research Achievements |
ドラム演奏の熟練者は非熟練者と比べて何が違うのか?本研究は、実際の演奏でも用いられる8ビートを課題とした実験データを集録し、認知科学における熟達研究・力学系理論の観点からドラム熟練者の巧さを描写することを目的とする。具体的には、得られた演奏の音声についてドラム教室講師に熟練度を定量的に評定させることで「熟練度評価データ」を取得し、それに基づいて実験参加者を熟練度別に3分類する。一方 、演奏の正確さと表現性については打間の時間構造・打圧の変動・音響的特徴などの「演奏データ」を、それらを成立させている身体協応については頭部・体幹・両上下肢、床反力中心の変位を含めた「運動データ」 を取得し、力学系理論により分析した上で、熟練度評価データ(また は熟練度分類)との関係を解明し、研究目的を達成する。
研究の2年目である2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための措置として緊急事態宣言が発出され、大学においてもキャンパスが閉鎖または入構制限がなされる中、人を対象とした実験を実施することが困難であったため、予備的な実験を実施するにとどまった。一方、本研究では、ドラム演奏を通して局所的な運動と大局的な全身運動の関係を検討することが課題となっていたが、基礎的な運動課題、すなわち手首における振り子運動と全身運動を記録したデータについては取得済みかつ未解析のものがあったので、ドラム実験の代替として、局所的な運動と大局的な全身運動の関係について解析し、その結果をScientific Reportsに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 2020年度は、実験準備についてはできたものの、本実験が未着手である。一方、2019年度の春季休業(2019年3月)以降、特に2020年度1年間かけて順次実験参加者数を大幅に増やしてデータを取得する予定で準備を進めていたとこ ろ、新型コロナ感染症(COVID-19)の影響で、国をはじめ東京都・埼玉県などから外出自粛要請が出されたこと、所属大学においてもキャンパスの立入禁止措置 がとられ、本研究で実験対象としているプロおよびアマチュアの演奏家 (多くは学外者)を実験室に招き入れることができないことなどにより、実験が実施できない状況が続いた。そのため、2020年度の実験実施については大幅な遅延が発生した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究にはドラム奏者に大学の実験室に来室してもらい、実験に参加してもらうことを必須としている。今後の外出自粛要請あるいは新たな生活様式の要請が具 体的にどのようになるのかによって大学側の対応も変わるものと思われる。そのなかでできることを実施する予定である。一方、概要でも述べたとおり、本研究では、ドラム演奏を通して局所的な運動と大局的な全身運動の関係を検討することが課題となっていたが、基礎的な運動課題、すなわち手首における振り子運動と全身運動を記録したデータについては取得済みかつ未解析のものがあったので、ドラム実験の代替として、局所的な運動と大局的な全身運動の関係について解析し、その結果をScientific Reportsに投稿し、査読中である。感染症の状況が変化しないようであれば、すでに発表済みのドラムに関する論文と併せて成果としたい。
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Causes of Carryover |
実験実施が遅れたこと、および成果発表のための旅費が生じなかったことなどにより、残額が生じたため
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