2019 Fiscal Year Research-status Report
ダイナミック細胞応答を観測可能な統合化インビトロシステム構築
Project/Area Number |
19K12751
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
小森 喜久夫 近畿大学, 工学部, 准教授 (60431813)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 電気化学モニタリング / カーボンナノ材料 / インビトロ計測 / オンサイトバイオアッセイ |
Outline of Annual Research Achievements |
個体応答を理解し制御するには、ダイナミックな細胞動態や細胞応答を細胞非侵襲で連続観測する必要がある。本研究では、薬物の体内動態を制御する代謝臓器の一つである肝に着目し、ホルモンや薬物刺激に基づく糖代謝応答変化を、細胞非侵襲の電気化学的手法を通して血糖値を連続観測することにより、従来の終点計測法では評価できなかったダイナミックな細胞動態や細胞応答を明確にすることを目標としている。 1年目では、カーボンナノ材料を用いた電気化学モニタリングツールの検討をおもに進めた。その一つとして、血清を含む培養液中でも安定して計測可能な電気化学グルコースモニタリングユニットの改良を進めた。これまでカーボンナノ材料を電極材料として、その表面にグルコース脱水素酵素(GDH)を固定化した電極の開発を行ってきた。ただし、この電極をそのまま血清を含む培養液に浸漬して計測しても、血清の影響により安定した電流値を得られなかった。原因の一つとして、血清中のタンパク類が電極に悪影響を及ぼしていることが分かった。そこで電極表面に半透膜を設置することで、血清を含む培養液中でもグルコース対する電流応答の安定性が格段に向上し、少なくとも24時間の連続計測は可能であった。 この電極を用いて、ヒト肝がん細胞株Hep G2の糖代謝におけるグルコース消費の様子を、細胞非侵襲で直接モニタリングできることを達成した。また、抗がん剤シスプラチンをHep G2に暴露したとき、シスプラチンによってHep G2はダメージを受け、それに伴い、グルコース消費速度が低下することも24時間のモニタリングから確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気化学モニタリングツールの作製については、当初の計画通り、血清を含む培養液中でも比較的安定した電流応答を得るための知見や方法論がまとまりつつある。また、細胞株であるものの、細胞のダイナミックな応答現象を、細胞非侵襲で24時間モニタリングするための条件に関する知見も深まりつつある。これらのことを総合的に考えて、当初の予定通り、おおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒト肝ガン細胞株Hep G2を用いて、抗がん剤など薬物と細胞応答の時間関係をグルコース濃度モニタリングから評価することを、引き続き検討する予定である。特に、オンサイトバイオアッセイへの応用を見据えつつ、そのときに必要になる条件や方法論を抽出してまとめることを意識して、研究を遂行する。 細胞株以外にも、初代細胞を用いた検討も進める。Hep G2では糖代謝は行うものの、糖新生の機能は欠如している。一方で初代肝細胞は、糖代謝と糖新生の両方の機能を持つ。そこでデモンストレーションとして、ラット初代肝細胞を用いて、インスリン添加時およびグルカゴン添加時でのグルコース代謝とグルコース生成の電気化学モニタリングを実施する。これにより、初代肝細胞を用いるオンサイトバイオアッセイでの必要条件や方法論を確立する予定である。
|