2020 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞とPRPを併用した人工神経の開発 末梢神経再生におけるアンチエイジング
Project/Area Number |
19K12760
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中村 博亮 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60227931)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 卓也 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 客員研究員 (10597321)
高松 聖仁 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 客員准教授 (30295688)
横井 卓哉 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (90711820)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | アンチエイジング / 免疫応答 / iPS細胞 / 神経前駆細胞 / インビボイメージング / 移植細胞の生存率 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は人工神経内に移植したiPS細胞由来神経前駆細胞による、人工神経内の神経再生促進因子は、移植動物の週齢により左右されるのかを検証した。具体的には雄6週齢 のC57BL/6マウス、雄96週齢のC57BL/6マウスそれぞれに長さ5mmの坐骨神経欠損を作成し、iPS細胞由来神経前駆細胞を付加した人工神経を用いて架橋再建を行った(iPS群)。対照群は人工神経単独にて架橋再建を行った(コントロール群)。移植後4日目、7日目で人工神経内における神経再生促進関連因子の遺伝子発現を、Real time RT-PCR法を用いて比較した。測定する因子は神経栄養因子として脳由来神経栄養因子BDNF(brain-derived neurotrophic factor)、グリア細胞由来神経栄養因子GDNF(Glial cell line-derived neurotrophic factor)、転写因子としてATF3(activating transcription factor3)とした。その結果、若齢マウスでは、各因子いずれにおいても、iPS群で遺伝子発現が強い傾向がみられ、その傾向は移植後4日目でより顕著であった。特に4日目のATF3、7日目のBDNFにおいては、コントロール群に比べ、神経前駆細胞を付加したiPS群において、有意に強い発現が得られていた。老齢マウスでは、若齢マウスと同様、iPS群でそれぞれの遺伝子発現が強い傾向がみられ、その傾向は移植後4日目で顕著であり、4日目のBDNFとGDNFにおいては、コントロール群に比べ、iPS群において、有意に強い発現が得られていた。すなわち、人工神経内への細胞付加によって、神経再生促進関連因子は移植動物が若齢・老齢いずれであっても増大するが、増大する各因子は、週齢により若干の違いがあることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はこれまで、若齢マウスや老齢マウスの坐骨神経欠損を、iPS細胞由来神経前駆細胞を付加した人工神経を用いて架橋することにより、人工神経単独よ りも、末梢神経再生が促進されることを報告してきた(Uemura T. BBRC. 2012, Yokoi T. JBMR 2017)が、これらは細胞の移植早期に、細胞から分泌される何らかの神経再生にかかわる液性因子が作用しているためと考察してきたが、今回、人工神経内で増大する神経再生促進関連因子を具体的に確認することができ、2020度の目標はおおよそ達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、移植動物の免疫状態によって移植した神経前駆細胞の生存率に影響があるのか、その長期的な生存についても引き続き検証を続けていきたい。具体的には免疫抑制マウス (NOD/SCID, 6週齢)および免疫応答マウス(C57BL6, 若齢: 6週齢)に長さ5mmの坐骨神経欠損を作製し、人工神経を足場として上記のiPS細胞由来神経前駆細胞(1匹あたり400万個)を移植する(以下iPS細胞付加人工神経)。移植後4,8,12,24,48週と経時的に生体内イメージングを用いて移植細胞の生存率を比較し、免疫応答マウスと免疫抑制マウスとの間で移植した神経前駆細胞の生存率の比較を行っていきたい。また、当初の計画どおり自己多血小板血漿(PRP)を人工神経内に充填し、PRP充填人工神経を若齢動物、老齢動物の神経欠損に架橋移植しその効果についても実験中であり、最終年度の検証項目としたい。
|