2019 Fiscal Year Research-status Report
腎オルガノイドにおける自己血管化必要因子の探索・解明
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19K12763
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
関谷 佐智子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00398801)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己血管化 / 3次元組織 / 腎オルガノイド / かん流培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は組織工学分野における組織内の自己血管化必要因子の探索を目的とし、腎オルガノイドを用いて検討している。本課題における腎オルガノイドはヒトiPS細胞より誘導され、3次元組織内に上皮細胞による尿細管様構造をもつ。さらに、この3次元組織には上皮細胞による管状構造の間を血管内皮細胞が走行する構造が得られる。しかしながら、血管内皮細胞は通常の静置培養では減少し、腎オルガノイド単独では糸球体血管形成までは至ることができない。従って、本課題では培養期間に従った3次元組織内の血管内皮細胞によるネットワーク構造の減少の原因は、組織内血管内皮細胞の基本的性質と環境の物理的要因に着目し検討を行った。3次元腎オルガノイド内部のCD34陽性血管内皮様細胞を回収,添加因子、培養基材、酸素濃度およびPDGFR陽性間葉系細胞との間接共培養を行ったところ、最もその活発な増殖が確認されたのが低酸素条件での共培養時であった。一方で、これらのCD34陽性血管内皮様細胞は増殖能力が著しく低く、一定回数の分裂で停止してしまう可能性が示唆されている。一方で、腎オルガノイドをかん流培養したところ、組織内のCD34陽性血管内皮様細胞は、一定期間の静置培養と比較して発達が観察されるが培養期間に従って減少傾向は変化しなかった。したがって、3次元組織内におけるCD34陽性血管内皮様細胞には細胞内のシグナル伝達による増殖限界が存在する可能性が考えられた。このような限界は、ヒト腎臓における糸球体血管の再生困難な点と類似しており、今後は分裂限界を生じる細胞内分子機構について解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においてすでに確立しているかん流培養装置の発展により、かん流刺激の付与を検討可能であり、順調な進行が可能となっている。さらに、腎オルガノイド内のCD34陽性血管内皮様細胞も少数であるものの回収が可能になっているため、手法的には現在概ね順調に進行している。一方で、腎オルガノイドの誘導において、iPS細胞のバッチによる差があり、CD34陽性血管内皮様細胞の回収率に安定性が欠けていることが問題である。しかしながら、改修後の培養法の検討により一定数までは増殖が可能となり、遺伝子解析は可能となったため、こちらにおいても現状は順調に進行している。さらに再現性と解析手法の拡大を行うためには、多くの細胞数の入手が必要となり、さらなる高効率な回収と安定した培養法の確立が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析から、オルガノイド培養時に短期での培養液への非増殖因子である物質投与によって血管内皮細胞の構造が増加することが確認されている。一方で、抽出したCD34陽性細胞の非CD34陽性PDGFRB陽性細胞との間接共培養や低酸素処理も増殖に影響を与えることが確認されており、分泌物質の変化が増殖制御の一部を担っていることが推測されている。従って、非CD34陽性PDGFRB陽性細胞培養上清、もしくは分泌因子に注目する遺伝子発現解析を行い、関連因子の洗い出しを行い、汎用される血管内皮細胞への影響、また抽出したCD34陽性細胞への影響を確認する。
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Causes of Carryover |
本年度はオルガノイドからのCD34陽性細胞の抽出条件を検討したため、使用予定であったかん流培養が多く行えず、予定していた培養液の購入が少なかっため当該助成金が生じた。翌年度からかん流培養実験が増加するために翌年度で培養液購入費として使用することを計画している。
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Research Products
(1 results)