2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K12765
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
下權谷 祐児 日本大学, 工学部, 准教授 (30552575)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳動脈瘤 / 血流 / 血行力学 / 計算流体力学 / wall shear stress |
Outline of Annual Research Achievements |
脳動脈瘤の「増大」はそれが進行するとやがて破裂に至り,その結果クモ膜下出血が引き起こされることから非常に重症な現象である。しかしながら脳動脈瘤の増大のメカニズムは未だ明らかになっていない。それを明らかにすることができれば,瘤を発症した患者のより良いマネジメントにつながると期待される。危険因子として有力視されているのは血行力学的因子,とくに壁せん断応力(wall shear stress: WSS)である。本研究では,実験的に計測することが困難なWSSを計算流体力学(computational fluid dynamics: CFD)の手法を用いて患者個別的に定量評価することで,脳動脈瘤の増大とWSSの関係を明らかにすることを最終的な目的としている。前年度までに得られた結果を受けて,今年度はさらに解析症例数を増やしてCFDによる血行力学解析を進めるための準備的な工程を主に行った。まず共同研究先の医療機関から,実際に脳動脈瘤を保有している患者のCT血管造影(computer tomography angiography: CTA)データの提供を受け,解析対象となる脳動脈瘤およびその周辺血管の形状を抽出した。次に血管表面形状の修正および流入・流出口の延長などの編集作業を行い,最終的に患者個別のリアリスティックな血管モデルをコンピュータ上で作成した。これがCFDによる血行力学解析の対象形状となる。作成した症例数は計40例である。さらに,CFDを実行するための前工程として血管モデルに対する計算格子の生成と境界条件・計算条件の設定が必要となるため,これらの前工程を併せて進めた。以上のように,多数の症例に対して血行力学解析を行うための準備的な工程を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は40症例という多数の脳動脈瘤症例について,CTAデータから患者個別のリアリスティックな血管モデルを作成し,それに続くCFDによる血行力学解析を行うための前工程を着実に進めることができた。これにより,次年度に血行力学解析を円滑に実行するための準備が整ったことから,研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作成した血管モデルに加えさらに解析症例数を増やし,それらに対してCFDによる血行力学解析を実行する。前年度までに得られた結果をふまえ,このような解析症例数を増やした条件下においても,脳動脈瘤の増大群と非増大群の間で,「WSSの乱れ」を表す血行力学的指標に有意な差が認められるかを検討する。他の血行力学的指標についても,解析症例数を増やした条件下でどうなるかを検討する。得られた結果を論文としてまとめるとともに,学会等で研究成果を発表する。
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Causes of Carryover |
出席を予定していた国際学会のキャンセルなどにより,次年度使用額が生じた。次年度は多数の血管モデルに対してCFDによる血行力学解析を実行することで多くの解析結果が蓄積しデータ量が膨大となることが予想されるため,この次年度使用額については,データ保存用および共同研究先とのデータ共有用のストレージを購入するための研究費として有効活用する計画である。
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Research Products
(1 results)