2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K12765
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
下權谷 祐児 日本大学, 工学部, 准教授 (30552575)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳動脈瘤 / 血流 / 血行力学 / 計算流体力学 / wall shear stress |
Outline of Annual Research Achievements |
脳動脈瘤の「増大」はそれが進行すると最終的に「破裂」に至り,その結果クモ膜下出血が引き起こされる。したがって脳動脈瘤の増大は,破裂と切り離すことのできない非常に重要な現象である。本研究では,脳動脈瘤の増大およびその最終段階としての破裂に関与する血行力学的因子を明らかにすることを最終的な目的としている。今年度は,前年度までに作成した患者個別の血管モデルおよびそれらの血流シミュレーション結果を用いて,増大瘤vs.非増大瘤,および,増大瘤の増大前vs.増大後の血行力学的比較を行うことで,増大に有意に関与する血行力学的因子について調べた。その結果,増大瘤は非増大瘤に比べて血流による壁せん断応力(以下,WSS)の大きさが大きく,WSSの時間的乱れを表す指標(OSI,GON,NtransWSS)は小さいと考えられた。WSSの時間的乱れを表すもう一つの指標であるtransWSSについては,増大瘤のneck(根元の部分)などで局所的に大きくなっている可能性が考えられた。以上のことから,瘤発生時と類似した「高WSS+強い乱れ」が瘤増大時にneckに生じている可能性が考えられた。一方,増大前後での血行力学的環境については,増大後はWSSの大きさやtransWSSは減少し,transWSS以外の乱れ指標は増加する傾向が認められた。先行研究において,破裂瘤はWSSが低下し乱れが強い傾向にあると報告されている。これらの結果より,瘤増大と破裂では血行力学的環境が全く異なっている可能性が考えられ,環境が入れ替わった時点が破裂リスクの高い状況であるのかもしれない。
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