2019 Fiscal Year Research-status Report
脳情報フィードバック制御を活用した病態進行の予測・改善手法の開発
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19K12768
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
井出 薫 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (90806671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 晋 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20510960)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳神経回路 / オプトジェネティクス / 神経細胞活動 / マルチニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
脳神経回路網は動的に恒常性を維持・変容させる機構を備えているが、脳神経細胞が重度に変性・脱落した場合、恒常性変容機構が病的に作用し、神経変性疾患が発症すると考えられる。しかし、従来の脳深部刺激法は動的恒常性の乱れが考慮されておらず、刺激手順の体系的な最適化は成されていない。 本研究では、パーキンソン病に着目し、情報工学と最先端の電気生理学的手法を用い、脳神経回路の活動動態をリアルタイムに計測・解読し、解読した脳状態に応じた神経刺激を加え、脳機能ネットワーク活動をフィードバック制御する。更に、最適な解読情報、刺激パターン・タイミング等を探り出し、病態進行の予測・改善へ導く手法の開発を目指す。 本年は、複数の神経細胞活動と局所脳波を同時に記録するオフラインシステム法を確立した。さらに、そこから記録されたデータから、PD脳内の動的恒常性破綻を推定する手法を確立した。6-OHDAを黒質緻密部へ投与することでドーパミン作動性ニューロンを選択的に変性脱落させたパーキンソン病(PD)モデル齧歯類を作製し、PD症状判定のための行動解析システムを構築し、そのシステム評価を行った。PD患者の運動関連部位からは、その主症状とともに、病的なほど過大な脳波、特にβ波の出現が確認されている。そこで、運動関連部位の局所脳波上に現れる異常な神経活動を検出することで、動的恒常性の破綻を検出し、PD症状改善に有効な脳情報の解読を試みた。同時に、脳深部にある基底核にアクセスするため、3Dプリンタなどを用いて、マイクロドライブ(電極留置装置)を独自に設計・開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の神経細胞活動と局所脳波を同時に記録するオフラインシステム法を確立した。そこから記録されたデータから、PD脳内の動的恒常性破綻を推定する手法を確立した。6-OHDAを黒質緻密部へ投与することでドーパミン作動性ニューロンを選択的に変性脱落させたPDモデル齧歯類を作製し、PD症状判定のための行動解析システムを構築し、そのシステム評価を行った。運動関連部位の局所脳波上に現れる異常な神経活動を検出することで、動的恒常性の破綻を検出し、PD症状改善に有効な脳情報の解読を試みた。同時に、脳深部にある基底核にアクセスするため、3Dプリンタなどを用いて、マイクロドライブ(電極留置装置)を独自に設計・開発した。 よって、研究計画通りに実施されているため、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
解析システムについては、神経活動解析システムをリアルタイム化するための改良を行い、CLNSのプロトタイプを作製する。リアルタイム化に関しては、分担者が開発し、論文発表だけでなく、特許出願もした独自技術を活用する。同じく前年までに検証する病的なβ波などがPD症状に及ぼす影響を運動関連部位から検出し、その情報に基づいて運動関連部位へフィードバック信号として光や電気による神経刺激を施す。電気刺激に加えて、最新の光遺伝学を活用した光刺激についても活用した経験がある。具体的には、遺伝子治療の有力候補でもある組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を介して、光活性化蛋白質チャネルロドプシン2(ChR2)を導入することにより実現する。AAVに関しては、CaMKIIαプロモータを介して興奮性のグルタミン酸作動性ニューロン選択的にChR2を導入する。更に、遺伝子組換え技術(Cre-loxPシステム)を活用することで、細胞種選択的刺激システムを構築する。光ファイバを一次運動野へ留置し、そこから青色光を照射することで、一次運動野の投射軸索を選択的に光刺激するDBS予備実験をすでに実施している。また、従来の電気刺激を用いたDBSについても予備実験を実施しており、視床下核へのDBSによりPD症状の改善効果を確認済みである。
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Causes of Carryover |
PDモデル動物を用い、複数の神経細胞活動と局所脳波を同時に記録し、その情報から神経回路網を制御する追加実験が必要なため次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、神経細胞活動や局所脳波の情報から、電気刺激だけではなく光遺伝学を活用した光刺激を与えて神経回路網をフィードバック制御する追加実験を実施するために使用する。
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Research Products
(5 results)