2019 Fiscal Year Research-status Report
脳代謝物クリアランス特性の光学イメージング計測法の開発と応用
Project/Area Number |
19K12773
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
片山 統裕 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20282030)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | glymphatic system / brain waste clearance / diffusion in the brain / functional IOI / REM sleep / optical imaging |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の健康を維持するためには,アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ(Aβ)などの代謝産物を除去するクリアランス機能が重要である.我々は,脳のクリアランス機能を担うGlymphatic系の特性を研究する新しい手法である Functional Integrative Optical Imaging (fIOI)法を考案・開発してきた.本研究ではfIOI法を改良し,無麻酔のマウス大脳皮質の睡眠・覚醒状態依存性の定量化に挑戦する.さらに脳クリアランス系の調節機構の解明をめざしている.2019年度は従来型fIOI法の問題点であった 時間分解能と信号対雑音比の向上に取り組んだ. (1)マウスの脳のクリアランス特性をレム/ノンレム睡眠期において比較するためには,その周期より十分短い間隔でクリアランス・パラメータをサンプリングする必要がある.そこで,従来法より短時間で脳内分子の拡散特性を計測可能な蛍光トレーサを探索した. (2)無麻酔状態では活発な自発性脳活動や自律神経活動が生じるため,脳血流変動等に由来する光学的ノイズが発生する.fIOI法の信号対雑音比を向上させるためにはこのノイズを抑制する必要がある.その対策として光学ノイズ源の活動をfIOIと同時計測し,オフライン信号処理によってノイズキャンセルする方法について検討した.光学イメージングをマルチスペクトル化し,蛍光トレーサを変更することにより対応可能であることが分かった.複数のLED光源と照射タイミングをイメージングデバイスと同期させるための制御回路を設計・製作するとともに,イメージングデータを処理し,光学ノイズを除去するソフトウェアを開発した.マウスの麻酔濃度を下げ,弱い自発性脳活動が観察される状態でこの実験系を用いた計測試験を行った結果,信号対雑音比が約20%向上することが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では,研究計画の際には想定されていなかった問題が生じておらず,予定通りに進捗しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発したマルチスペクトルfIOI法を無麻酔のマウスに適用し,睡眠状態での脳クリアランス機能の計測に取り組む.また,脳クリアランス系の数理モデルを構築し,数値シミュレーションに取り組む.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイスル感染症の影響で,予定されていた学会や研究会が中止されたため出張を中止した.また,輸入品の入荷スケジュールが見通せなくなったため,購入を次年度以降に先送りした.感染症の流行に伴う社会情勢の変化に対応し,柔軟に購入計画を修正して対応する予定である.
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