2019 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ糸球体モデルによるタンパク透過性亢進の機序解明
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19K12774
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
池内 由果 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (70420114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 靖子 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (60451720)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロ糸球体モデル / タンパク透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
尿は腎臓にある糸球体という小さな血管の装置で血液から濾過されます。糸球体血管壁は上皮細胞と内皮細胞、その間にある基底膜の3層で構成されています。この血管壁はある大きさ以上のタンパク質を漏らさない濾過障壁として働いていますが、糸球体に炎症が起こると濾過障壁の機能が損なわれて、大量の蛋白尿が出ます。この研究では、濾過障壁障害が起こるメカニズムを解明するために、ヒト糸球体上皮細胞や血管内皮細胞の細胞株をマイクロ流体デバイス内に培養して濾過障壁モデルを作成し、正常糸球体濾過障壁の再現や、機能破綻モデルを作成することができるか実験し、糸球体腎炎の原因解明や新しい治療法を開発するツールとすることを目的としています。 初年度は、透過性試験を実現可能な球体濾過障壁モデルのためのマイクロデバイスを作製しました。マイクロチップはスライドガラス大のデバイスで、内部に並行する2本の内径数百μmの流路 がメンブレンフィルターを介して接している構造を有します。メンブレンフィルターとなる多孔質膜をコラーゲンコーティングし、表裏に健常ヒトポドサイトおよび健常ヒト糸球体内皮細胞株を分化培養し,この細胞隔壁を介した平行な2本の流路を それぞれ血管腔およびボウマン(原尿)腔とします。生体に近い濾過障壁モデルとするために血管側流路を静水圧もしくは 定圧ポンプによって加圧することにより細胞層を通り抜ける方向に剪断応力を印加できるよう作成しました。この系を用いて、蛍光ラベルアルブミンを高分子タンパク、カルセインという蛍光色素を低分子タンパクとして透過性実験を行ったところ、高分子タンパクの透過率は低分子カルセインと比較して低いことがわかりました。基本的なマイクロ糸球体モデルの作成に成功したといえ、この系を用いてさらなるタンパク透過性メカニズムの研究を進めることができます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定した、透過性試験を実現可能な球体濾過障壁モデルのためのマイクロデバイスの作製は可能であり、定常状態での透過性実験も生理的な状態に近い剪断力を加えることで、高分子タンパクの透過率が低いことが分かった。 以上より、実験は概ね予定通り進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、ポドサイト遺伝子変異株を作製し、遺伝性糸球体疾患マイクロモデルを開発する。遺伝性糸球体疾患モデル構築の最初の試み として、先天性糸球体疾患の原因遺伝子のうち最も頻度の高いネフリン遺伝子とポドシン遺伝子の変異株を作製してマイクロデバイス内に培養 して透過性試験を行い、健常ポドサイトセルラインで構築した糸球体マイクロモデルの透過性との差異を検討する。これらの糸球体濾過障壁マ イクロモデルを用いて、1)血管内皮増殖因子(VEGF)などの透過性を亢進させる分子や、2)何らかの透過性因子が病因と考えられている特 発性ネフローゼ症候群患者血清、分離リンパ球刺激培養上清、さらに3)透過性亢進の抑制を誘導する薬剤などを血管側の流路に負荷して透過性の変化をみることで、病態の予知や診断、また、疾患における濾過障壁機能破綻の本態が内皮細胞やポドサイトのどのような変化に基づくも のか、など糸球体濾過障壁破綻のメカニズム解明や治療の可能性を探索するデバイスとして応用可能か明らかにする。
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Causes of Carryover |
初年度は学会発表がなく、旅費のしようがなかったため、次年度の旅費に加算する予定である。
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