2019 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞から成熟赤血球製造効率の向上に向けた赤芽球脱核現象の制御研究
Project/Area Number |
19K12785
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
満田 憲昭 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10314329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 赤血球分化 / 脱核 / Cyclin D3 / プロテアソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、輸血用の赤血球は献血により100%賄われているが、安定的な供給のためには造血幹細胞やiPS細胞からの成熟赤血球の人工的作製技術の確立が必要である。そのなかで特に問題となっているのは、脱核の効率の悪さである。哺乳類の赤血球分化においてのみ観察される脱核は、赤血球分化の最終過程で行われるダイナミックな生命現象であるが、その分子機構については未だに不明な点が多い。申請者は、脱核時にCyclin D3が分解され、それにより細胞周期制御因子Cyclin D3-Cdk4/6複合体のキナーゼ活性が低下することが赤芽球に脱核を誘導するトリガーとなる可能性を見出している。 本年度は脱核時におけるCyclin D3の関与についてより詳細に検討した結果、Cyclin D3の分解を人為的に遅らせることにより脱核の進行が遅れること、またその脱核の遅れがCdk4/6阻害剤の添加によりキャンセルされることを見出した。このことから脱核の開始時期の決定にCyclin D3-Cdk4/6複合体のキナーゼ活性が低下することが重要であることがより強く示唆された。 今後の計画としては、プロテアソームによる分解を受けないCyclin D変異体を赤芽球に導入した場合の脱核率の変化について解析する。また、Cyclin D3タンパク質のプロテアソームによる分解に係るユビキチンリガーゼを同定し、その活性調節による脱核の制御の可能性を検討する。さらに、ヒト臍帯血由来CD34陽性前駆細胞やマウス由来iPS細胞より誘導した赤芽球にCdk4阻害剤を添加することにより脱核効率が改善することを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、申請者は細胞周期制御因子であるCdk4やCdk6(Cdk4/6)と複合体を形成しキナーゼ活性を発揮させることが知られているCyclin D3の赤血球分化における挙動について、以下のことを明らかにしている。 (1) マウス赤芽球をエリスロポエチン(EPO)刺激により分化誘導した際にCyclin D3タンパク質量が増加する。 (2) Cyclin D3タンパク質は脱核開始時にプロテアソームにより分解を受ける。 (3) プロテアソーム阻害剤の添加により、Cyclin D3タンパク質の分解が阻害されるとともに脱核の進行が遅れる。
本年度の研究において申請者はEPO刺激による分化誘導の13時間後に2回目のEPO刺激を行うことにより、Cyclin D3タンパク質の分解が遅れ、かつ脱核の進行も遅れることや、この脱核の遅れがCdk4/6阻害剤(PD0332991)の添加により緩和されることを見出している。これらの結果から、Cyclin D3-Cdk4/6複合体のキナーゼ活性の低下が赤芽球に脱核を誘導するトリガーとなる可能性を強く示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
脱核開始時期の決定にCyclin D3タンパク質のプロテアソームによる分解が重要な働きをしている可能性を更に検証する為に、プロテアソームによる分解を受けないCyclin D変異体を赤芽球に導入した場合の脱核率の変化について解析する。 また、脱核開始時期の決定のメカニズムをより詳細に理解する為に、Cyclin D3タンパク質のプロテアソームによる分解に係るユビキチンリガーゼを同定し、その活性調節による脱核の制御の可能性を検討する。 さらに、ヒト臍帯血由来CD34陽性前駆細胞やマウス由来iPS細胞より誘導した赤芽球にCdk4阻害剤を添加することにより脱核効率が改善することを明らかにする。
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Causes of Carryover |
直接経費の「その他」に該当する動物飼育費に端数が生じたため、9円の残金が生じた。残金は翌年度分と合わせて、物件費に充当する。
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Research Products
(2 results)