2019 Fiscal Year Research-status Report
フェムト秒光パルス列重なり変調による2光子光音響顕微鏡の開発
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19K12787
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山岡 禎久 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (80405274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光音響イメージング / 非線形光学 / フェムト秒パルスレーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
光音響イメージングは生体深部を高(分子)コントラストに観察できる方法であるため,次世代の医療技術として注目されている.特に,非線形光学効果と組み合わせた2光子光音響顕微鏡はミリメートルを超える生体深部を高空間分解に観察する方法として,比較的厚みのない皮膚や管空臓器に対するがんの広がり診断などへの応用が期待されている.しかしながら,2光子光音響波の選択検出は十分ではないため,コントラストの劣化が問題点として存在する.その問題を解決するために,本研究では,フェムト秒パルスレーザーからのビームを2つに分け,一方の光路を固定し,一方を高速に走査することにより,対物レンズの焦点近傍で重なり変調を作り出し,それによって発生する光音響波を検出する方法を提案する.光音響波の重なり変調周波数と同じ成分を抜き出すと2光子光音響波を選択的に検出することができ,光音響像のコントラストを向上させることが可能である.原理検証として,重なり変調による蛍光,光音響波検出装置を構築し,2光子蛍光が重なり変調と同じ周波数で変調されていることを確認した.同様に,重なり変調周波数と同じ周波数で光音響波も発生していることがわかった.このように重なり変調を用いて2光子吸収による光音響波を観察したのは初めてのことである.重なり変調は焦点近傍でしか起こらないため,通常の非線形顕微鏡においてコントラストを劣化させる焦点以外からの信号を押さえることができる.加えて,重なり変調周波数成分の光音響波を抜き出すことにより,2光子光音響波検出による深さ方向イメージングが可能であることも明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェムト秒パルスレーザーからのビームを2つに分け,一方の光路を固定し,もう一方の光路にKTN偏向器を組み込むことにより,高速走査する.それら2つのビームを重ね合わせ,対物レンズの焦点近傍で重なり変調を起こす光学系を構築した.この光学系を用いて,2光子吸収溶液に対して,発生する2光子蛍光,光音響波を測定した結果,重なり変調周波数と同じ周波数で発生していることを明らかにした.発生する光音響波の重なり変調周波数成分を検出し,深さ方向の強度プロファイルを測定した結果,試料のエッジ部分が正確に描出されていることが分かった.このことは,深さ方向に分解能を持つ画像化が可能であることを意味する.現在測定は,濃度の高い溶液を使い信号の出やすい条件で測定を行っているため,どのような条件まで測定が可能なのか,条件の違う様々な試料,生体ファントム,生体試料に対して今後測定していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,令和元年度に試作した光音響イメージングシステムを用いて,作成した生体ファントムに対して装置の性能評価を行う.その結果をもとに,装置の改良を行う.生体ファントムを用いた実験を行い,装置の最適化(波長,パルスエネルギーなど)を行う.令和3年度は,生体ファントムを用いて,装置の性能を評価した後,実験動物(ラット,マウス)を用いて,生体への応用を目指す.その際,最適な波長を選定する.さらに,新たに発生した問題に対して,装置の改良を行う.
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Causes of Carryover |
重なり変調を用いた光音響波測定,イメージング装置の作成に使う光学部品,電子部品が計画より,少なく済んだため,差額が生じた.しかしながら,性能評価を行いながら今後装置の改良を継続して行っていくため,今年度,その差額を含めた予算を使って,装置を改良するための光学部品,電子部品等の購入に利用する予定である.
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Research Products
(12 results)