2019 Fiscal Year Research-status Report
動脈内を能動移動し自動低侵襲埋込みを実現する近未来超小型人工心臓の基礎研究
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19K12792
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 英治 東海大学, 札幌教養教育センター, 教授 (30240633)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人工心臓 / 軸流型補助人工心臓 / 高分子大動脈弁 / 拍動性 / SHE |
Outline of Annual Research Achievements |
従来より開発を進めていた後部インペラ設置式軸流型補助人工心臓を元に,大動脈弁位置に設置可能とするため外径12mm×長さ63mmの後部インペラ設置式軸流型補助人工心臓を開発した.さらに,この軸流型補助人工心臓を大動脈弁位置に装着するため,東京大学が開発したJelly fish弁と類似した高分子膜人工弁と組み合わせたTrans-valve軸流型補助人工心臓を考案した. このTrans-valve軸流型補助人工心臓の性能評価を目的に,我々が開発した体内埋込みモータ駆動拍動型補助人工心臓を用いて左心室を模擬し,この拍動型補助人工心臓の流入側にHall Valve,流出側にTrans-valve軸流型補助人工心臓を装着し,Trans-valve軸流型補助人工心臓の循環補助効果をin vitro実験で検討した.我々の従来の研究により,左心室に直列接続する軸流型補助人工心臓は左心室の作る拍動性が維持されることを確認しているため,左心室補助効果とともに拍動性について評価検討を行った. その結果,Trans-valve軸流型補助人工心臓を16800rpmで通常の弁として機能し,回転速度26400rpmで駆動することで,体循環を流れる流体エネルギーが+62%となったのに対し,左心室の仕事量に相当する拍動型補助人工心臓消費電力が-21%となり,左心室循環補助効果を検証できた.また,拍動性について,拍動流成分のエネルギーを示すSHE(Surplus Hemodynamic Energy )で評価したところ,臨床で使用されている軸流型補助人工心臓はSHEが-97%に対し,Trans-valve軸流型補助人工心臓では-15.4%となり,定常流ポンプで有りながら拍動性を維持できる特徴を有することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
このTrans-Valve 軸流型補助人工心臓の結果を受け,長期使用可能な第2世代軸流型ポンプとしての小型化は,ロータ永久磁石の薄肉化,すなわちロータ外径をどこまで小さくできるかに依存する.しかし,現在の国内企業の永久磁石製造の技術レベルでは,ロータの最小外径が4mmとなり,ロータ-ステータ間血液流路の確保やロータ厚みを考えると外径10mmまでが小型化の限界であることがわかった.一方,高齢者の重症心不全患者の増加とともに,補助人工心臓の低侵襲化手術のニーズが高く,カテーテル設置式補助人工心臓が期待されている.カテーテル設置にするためには,ポンプ外径8mm以下が求められるため,超薄型永久磁石製作技術に優れた海外モータメーカが作成する超小型ブラシレスモータを用い,軸シールを要する第一世代軸流型ポンプとして開発する必要性が明らかになった.すでにAbimed社のImpellaがあるが軸シールの代わりにパージシステムを用いており,システムとして複雑である.そこで,本研究では,Trans-Valve軸流型補助人工心臓の設計思想をもとに,Impellaのパージシステムに代わる磁性流体軸シールを用いた外径8mm以下のカテーテル設置式軸流型補助人工心臓の開発を進めている.現在,2020年度に予定していた磁性流体軸シールの開発を始めており,耐久試験を実施している.この磁性流体軸シールは,構造がシンプルで製作が容易,稼働途中のケアも不要で長期安定性が期待でき,Impellaを含め他の施設で開発を行っているカテーテル式軸流型補助人工心臓にも適用可能である.従って,この磁性流体軸シールが実現されると,パージシステムやワイヤドライブなど複雑な機構が一切不要となるため,カテーテル式軸流型血液ポンプの革新的な技術発明になる可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
カテーテル式軸流型補助人工心臓に特化した磁性流体軸シールの第一段階として軸回転数8000rpmでの耐久試験を実施している.1年程度の耐久性を確認後に,カテーテル式磁性流体軸シールで期待される最大回転速度30000rpmで耐久試験を実施する予定である.軸回転疎幾度30000rpmによる耐久試験には,カテーテル式軸流型人工心臓に用いる海外メーカのモータを使用予定である. また同時に,上記モータを用いたカテーテル式軸流型補助人工心臓の試作も行う. カテーテル式軸流型補助人工心臓に特化した磁性流体軸シールは,2020年度の開発を予定していたが,半年の前倒しで研究が進んでおり,このままのペースで研究を進めていきたい.
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Causes of Carryover |
翌年に97440円の繰り越しとなったが,これは2020年1月末に発注を出したチタンメッシュ組織標本作成の納期が先方の理由で遅れ2020年度になったこと,また,同じく2019年10月に発注したチタンメッシュが,メーカ側の都合で2020年度になったことに原因し.両者が2019年度に納入されていれば,次年度使用額(BーA)は,限りなくゼロに近かったため,ほぼ予定通りに予算を適切に使用していたものと考えている.
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Research Products
(11 results)