2020 Fiscal Year Research-status Report
動脈内を能動移動し自動低侵襲埋込みを実現する近未来超小型人工心臓の基礎研究
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19K12792
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 英治 東海大学, 札幌教養教育センター, 教授 (30240633)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人工心臓 / 軸流型補助人工心臓 / 超小型軸流血液ポンプ / 磁性流体 / Impella / カテーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
テーテル設置式軸流型補助人工心臓Impella5.0は,急性心不全患者の救命に不可欠なデバイスであるが,耐久性10日間しかない.そこで本研究では,昨年度の研究成果を発展させ,Impellaより長期使用可能なカテーテル設置式超小型軸流血液ポンプの開発を行った. Impella5.0使用モータと同寸法の外径6mmのブラシレスモータを使用し,Impellaのパージシステムに代わるシールとして磁性流体を用いた超小型磁性流体軸シールを採用し長期耐久性を実現しようとしていることに特徴がある.開発目標として,Impella5.0を参考にポンプ差圧60mmHgに対し3L/分のポンプ性能を有すること,大腿動脈の挿入と大動脈弓の通過を前提に外径7mm以下,長さ40mm以下を目標とし,30日間の使用に耐えうる性能を有することを目的とした. 我々は従来より人工心臓用磁性流体軸シールの開発を行ってきたが,超小型磁性流体軸シールは,Impella2.5に代表される外径4mmのカテーテル設置式軸流血液ポンプにも対応できるよう構造を簡略化した新しい磁性流体軸シールを考案した.従来の磁性流体軸シールと異なり,回転軸側にリング型磁石を配置し,固定側にリング磁石と同心円的に鉄リングを配置する構造とした.本研究では,モータ外径6mmであるため,簡易構造化磁性流体軸シールを外径4mm×長さ3mmとし,両者の50μmのギャップに本研究で特注した磁性流体を満たす構造とした. 2020年度はハウジングをポリカーボネートとし,外径8mm,長さ50mmの超小型軸流血液ポンプを試作した.チタニウム合金を使用すれば外径7mm以内,長さ40mm以内の目標寸法を達成できる. 本年度は,磁性流体軸シールの耐圧推定および静水圧をかけての耐久試験実験と,試作した超小型軸流血液ポンプのin vitro実験を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超小型磁性流体軸シールは,外径4mm×長さ3mmとし,最初に,有限要素法電磁界解析により磁性流体軸シールのシール耐圧を理論計算したところ432mmHgとなり,軸流血液ポンプ用として十分なシール耐圧を有してることを確認した.同時に,静水圧115mmHgを加え軸回転速度8000rpmで耐久試験を実施し,静水圧に対し1年以上のシール耐久性を確認している. さらに,超小型軸流血液ポンプに使用するブラシレスモータに上記磁性流体軸シールを装着し,モータ回転速度30000rpmで空気中で回転させ耐久性を評価したところ,20日以上連続稼働し現在も継続中で,この磁性流体軸シールを用いた超小型軸流血液ポンプの機械的耐久性は,Impella5.0と同等,あるいはそれ以上であることを明らかにした. 次に,超小型軸流血液ポンプとしての流体力学的特性を評価した.目標とするポンプ特性は,Impella5.0の開発仕様に準じポンプ差圧Δp=60mmHgに対しポンプ拍出量3L/分とし,インペラ外径6.0mmと5.2mmとして軸流血液ポンプ用インペラを設計・製作し,血液を模擬した40%グリセリン溶液を用い評価した.その結果,外径が6.0mm程度のインペラの場合,流体の粘性の影響を強く受け,期待される圧-流量特性を得ることができず,学術的に確立している一般的なインペラ設計理論が全く適用できないことが分かった.その結果,経験を元に手探り的手法で,様々な形状のインペラを製作し圧-流量特性を測定して傾向をつかみ最適なインペラ形状を決定することとした.現在のところ,21600rpmでΔp=30mmHgに対し3L/分のポンプ拍出量を得ており,2021年度には目標とするポンプ特性を得られるものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はImpellaに続く次世代のカテーテル設置式軸流血液ポンプの開発を目指すことを目的としており,まず現在に臨床で使用され治療効果を上げているImpella5.0を上回る性能を有する超小型軸流血液ポンプの開発を目指す.その後の一つの方向性として,本研究の超小型軸流血液ポンプを,溶血特性や解剖学的適合性まで含め製品化と臨床応用に向け完成度を上げていく方向がある.また別な方向性として,さらに長期的視点にたち,現在はケーブルにて電力供給する方式で使用期間を30日程度の使用を想定した血液ポンプであるが,電力供給をワイヤレスしケーブルを削除することでさらなる長期使用を可能とする近未来的超小型補助人工心臓の基礎研究とする方向性がある. そこで本研究では研究期間内に,Impella5.0と同等のサイズで同等のポンプ性能を有しImpella5.0の耐久性を越える,Impella以上の性能を有するカテーテル設置式軸流血液ポンプの開発を目指し研究を進める.耐久性に関し,静圧下の磁性流体軸シール耐久性は1年以上あることを本研究で示したため,2021年度はポンプ稼働下の動圧が加わる状態でImpellaの23日を越えるポンプ連続稼働日数を目指しす.同時に,CFD解析により溶血特性を改善した軸流血液ポンプを製作し臨床応用・製品化に移行できる段階にまで到達できるよう努力する. その後,ワイヤレスに電力供給し長期使用可能な動脈内超小型軸流血液ポンプを実現するため,最新の世界の経皮的エネルギー伝送システムの開発状況を調べ,5W程度の電力を伝送する超小型エネルギー受信回路について検討を行う. 2021年度の本研究は,Impellaに次ぐ次世代の超小型軸流補助人工心臓の礎を確立すべく,研究を進める方針である.
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Causes of Carryover |
当初,第66回米国人工臓器学会大会(米国・シカゴ)への参加を予定していたが,新型コロナによりオンライン開催となったこと,また同様に国内学会も全てオンライン開催となり旅費を計上することがなかったため次年度使用額が生じたい.
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Research Products
(10 results)