2020 Fiscal Year Research-status Report
Effect of 50Hz Electric field to elongated life-span of Drosophila.
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19K12795
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Research Institution | Foundation for Advancement of International Science |
Principal Investigator |
川崎 陽久 公益財団法人国際科学振興財団, その他部局等, 専任研究員 (80449024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 直理雄 公益財団法人国際科学振興財団, その他部局等, 主席研究員 (00344234)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 寿命 / 老化 / 電界 / クリプトクロム / 睡眠 / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
交流電界処理が生存期間の延長を始めとした様々な健康増進効果を示す事を見出した。まずは、電源繋ぎ変え実験および電場遮蔽実験を行う事で、飢餓状態にあるショウジョウバエへの交流電界処理が生存期間を延長する現象は、紛れもなく交流電界によるものであり、熱や磁場や位置効果などによるものではない事が示された。また、交流電界処理を行う事によってATP量が増大する現象を見出したことから、ATPが生存期間延長に関連する可能性が示された。これらの現象は、クリプトクロム変異ショウジョウバエにおいては見られなかった。従って、クリプトクロムが電場の受容体として働く可能性が高まった。次に、DAMシステムを用いた行動解析により、交流電界処理がショウジョウバエの睡眠の質を向上する事が判明した。特に昼間に交流電界処理を施した個体の方が、夜間に電界処理したハエより効果が得られた。また、昼間睡眠に対する影響は夜間睡眠より相対的に低かった。これは、昼間の惰眠(昼寝)が減る事を意味するため、健康効果と評価できる。これら睡眠改善効果は、予想どおりクリプトクロム変異ショウジョウバエにおいては見られなかった。Dat、Homer、Pdf、Wake、Perなど睡眠関連遺伝子の発現についても、qRT-PCRを用いて測定した結果、交流電界処理を行うことで睡眠遺伝子Wakeの発現が高くなるなどの変化が見られた。 神経変性を伴う遺伝病の患者から原因遺伝子(α-シヌクレイン)を取り出してショウジョウバエに組み込んだ、疾患モデルを用意した。このショウジョウバエは、ヒトでの疾患と同じく、運動機能が急激に低下する。しかし、交流磁場照射をこのモデルショウジョウバエに対して行ったところ、運動機能低下の緩和が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電場による健康増進効果の分子的メカニズムを解明するため、酸化ストレスを与え、いくつかの酸化関連遺伝子の発現を調べている。ショウジョウバエへの電場処理によって、Pink1やBip等、いくつかの酸化ストレスマーカーが反応する事をqRT-PCRで確認できた。また、電場効果は、磁気受容体と考えられるクリプトクロムに変異を持つショウジョウバエでは見られなかった事から、電場と磁場との類似性が示唆された。そこで、交流電界に続き、交流磁場を用いて実験したところ、生存期間延長や運動機能の維持などの健康増進効果も確認できた。さらに、神経変性疾患に対する行動改善等の影響も確認できた。この神経変性疾患モデルショウジョウバエほどではないが、野生型ショウジョウバエも加齢によって運動機能は低下する。この野生型ショウジョウバエの運動機能低下も交流磁場照射で緩和することができるが、クリプトクロム変異ショウジョウバエにおいては、この現象は確認されなかった。 これまでに得られた成果の一部は、学会にて発表および学術誌(Scientific Reports)への投稿を行っており、現在リバイス中である。
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Strategy for Future Research Activity |
電場に続き磁場を照射する事で、同様の健康増進効果が確認できた。また、分子メカニズム解明のため酸化ストレスと電場との関連を調べている。次年度は、ATP量の変動や酸化ストレスマーカーなどを足掛かりにして分子メカニズムに関する解析を中心に進めていくと共に、産卵数変化やクリプトクロム蛋白の安定性、関連遺伝子の発現変化などを調べる。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、コロナ禍で実験動物の飼育に支障を来したため、飼育規模を縮小した。よって、飼料や容器など飼育費用にかなりの差額が残った。また、参加予定の学会や会合が、中止もしくはオンライン開催になったため、これらの予算も使用しなかった。また、ディープフリーザーを購入予定だが、コロナ禍でフリーザーの品薄状態が続いているため、納品および支払は今年度という事になっている。 外国語論文の投稿は既に行っており、現在はリバイス中である(Scientific Reports)。よって、掲載料も使用予定である。
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Research Products
(10 results)