2019 Fiscal Year Research-status Report
サブミクロンの表面粗さを持つチタンが細胞機能を制御する機構の解明
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19K12798
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
右田 聖 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (00512302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生体機能材料 / 生体適合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞が接着する表面の粗さと細胞機能との関係を分子レベルで明らかにすることである。細胞が接着面から受ける影響は、粗造化の具合によって大きく異なる。骨芽細胞は平滑面チタンで、MAPキナーゼ経路を介して骨分化へのシグナルを伝達する。一方、マイクロサイズの粗造化チタン表面では、Wnt/β-カテニン経路が活性化し、骨分化を亢進させる。これらの中間に位置するサブミクロンサイズの表面粗さにおいては、研究が不十分であり、粗造化の効果や細胞が受ける影響はほとんど明らかになっていない。 まず、粗造化表面での細胞接着について解析を行った。今年度はサブミクロン粗さ表面で優位に機能している接着分子に着目して研究を進めた。その結果、表面粗さが粗いほどインテグリンα5の発現が低下し、その代わりにインテグリンα2の発現が上昇するという知見を得た。マイクロサイズ~サブミクロンサイズの粗さ表面では、インテグリンα2が接着因子として優位に機能している可能性がある。細胞の接着様式は粗い表面と滑らかな表面で異なることが強く示唆された。 つぎに、骨分化を制御しているβカテニン経路とインテグリン分子との関係を明らかにする実験系を検討した。βカテニンの核移行シグナルであるGSK-3βのリン酸化を検出するために、抗GSK-3β抗体および抗リン酸化GSK-3β抗体を用いた実験を行った。予備的な結果ではあるが、βカテニンの核移行までを調べることのできる実験系を構築できつつある。 一方で、この細胞接着に関する表面粗さの影響が他の材料でも普遍的に生じる現象であるかを確認するために、生体不活性材料であるコバルトクロム合金を用いた研究にも着手した。コバルトクロムは細胞接着性が著しく低い。そのため、これに特異的に結合するコバルトクロム結合ペプチドを創出し、細胞接着性を付与できる実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった、粗造化金属表面で主に機能している細胞接着因子の同定を達成することができた。このことから、計画は概ね順調に進展していると判じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の目標は、粗造化金属表面において活性化しているWnt/β-カテニン経路が粗造化具合によってどのように変動するかを明らかにすることである。今年度までに構築しつつある抗体を用いた実験系を確立し、この問題に迫る。
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Causes of Carryover |
1.共通機器の利用回数が少なかった、2.試薬や基材使用の節約に努めた、これらの理由により次年度使用額が生じた。次年度以降に抗体を用いた実験を計画しているので、その購入に使用する。
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